僕は民間の廃棄物処理会社に勤務している。
勤続3年目になった時、社長室に呼び出された。
「――やあ、忙しいところすまないね」
社長はいつも通りにこにこしていた。
「そろそろ、夜の業務もお願いしたのだが、どうだね」
「夜勤なんかあったんですか?」
「重要な企業秘密に関わる廃棄物の処理でね、人を選ぶんだ。残業代上乗せするよ」
骨を埋めると決めた会社だ。評価されて嬉しくない訳がなかった。
「任せて下さい!」
二週間ほど過ぎて、帰宅後に呼び出された。
なるほど、こういう形でやるなら気付かない訳だ。
出社した僕は、事務所に入る。出勤していたのは、作業着姿の社長ともう1人の先輩社員だけだった。
「――いらしたよ」
僅かに開けてあった門を通り、暗い色のワゴン車が一台、敷地に入って来た。
運転していた男は、社長にきっちりと一礼する。顔に傷があり、眉毛が途切れていた。
ワゴン車には、2メートルはないぐらいの長さのナイロンの袋に何かが入っていた。
僕と先輩2人で持ち上げる。
ずしりと重く、柔らかい。
先輩は大柄で力もあるので、運ぶのにそれほど手間はなかった。
僕は先輩と一緒にそれを薄暗い処理場の粉砕器に通し、カケラを焼却処分した。
その後、2月に1回か2回ぐらい夜勤はあった。
4年ほどしたある日。
夜勤に来ているのは社長だけだった。
先輩が遅いのは珍しいな、と思いつつ着替えていると。
「遅くなりました!」
3年ほど前に入社した後輩が、姿を現した。
立場がいつの間にか先輩になっていたのか。
すぐ例のお客さんがやって来た。
消したままの車内灯でよく見えないが、今日もナイロンの袋が積まれている。
テコでも欲しくなりそうな大きさだが、ここは先輩として頑張らなければ。
語り手の行く末…
お疲れ様です。