彼は夜、目覚まし時計の秒針が刻む音に悩まされていた。不眠症に陥りかけた彼は、友人から秒針の聞こえない目覚まし時計を譲り受けた。
静寂を取り戻すはずの時計を家に置き、彼は夜を迎えた。
夜、彼の瞼の奥に異様な情景が浮かび上がる。窓の外に、青い光が差し込んでいる。
夢を見始めるのは良い兆候だと思いつつも、なかなか寝付けないでいた。
焦燥感を感じながらも、彼は瞼を閉じ、その情景を窺い続ける。
瞼の奥の窓から青い光は変わらずに射し込み続け、やがて遠くからサイレンの音が静かに響いてきた。
その音に聞き入る。サイレンの旋律は徐々に喧騒へと変わり、街の騒がしい音が充満する。
そしてやがてその音は静まり、静寂が戻りはじめた。
その間際。
「なんで?嫌だよ・・・苦しいよ」
彼の耳元で少女の声が囁いた。
その瞬間、驚愕した彼はとっさに目を開ける。次の瞬間には朝が来ていた。
混乱した彼は、友人にすぐ電話をかけ、話をした。だが、友人は首をかしげるばかりで、「目覚まし時計を渡した覚えなどない」と言うのだった。
「悪い夢でも見てたんじゃないか?その・・・あんまり気に病むなって言っても無理だろうけどさ」
その目覚まし時計は、現在は倉庫となってしまっている子供部屋の奥底に仕舞われており、
彼の寝苦しい夜は続いている。
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電話なのに相手が首を傾げてるの見えたのか