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呪い・祟り

ねこじろうさんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

お多福女
短編 2022/09/08 15:21 5,238view
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【お多福】
鼻が低く頬が丸く張り出した女性の顔、あるいはその仮面。(wikipediaより)
※※※※※※※※※※※※※※※

それは、まだまだ寒さが衰えない2月のある日の夕刻のこと。

私はいつものスーパーで買い物を終え、マンションに帰りつくところだった。

マンション入口の扉を開こうとしていると、何処からかドスンという鈍い音と共に軽い地響きがあった。

何気に右側に視線を移し、一瞬で戦慄した。

自転車小屋前のアスファルトに、女が倒れている。

白いブラウスに紺のスカート。

体は仰向けなのだが奇妙に捩れており、逆さにひっくり返った顔をこちらに向け、口角を上げて微笑みを浮かべている。

呆然として見ていると、女の頭部辺りにみるみるどす黒い血が広がってきた。

─たいへん、救急車呼ばないと!

慌てて携帯を出すと、119をタッチしていた。

後から分かったのは、倒れていたのはうちの上の階である6階に住む主婦のEさんで、どうやら自宅のベランダから飛び降りたということだった。

ご主人は地域では有名な開業医で、中学生の娘が一人いて、ご自身もマンション自治会の役員をしていた方で、なぜそんな方が飛び降りなんかしたのか?私には理解出来なかった。

その日の夜の食卓でのこと。

主人にその話をすると、「どんなに恵まれているように見える人でも、闇というのはあるものだよ」と、ありきたりの意見を言う。

それに対して、隣に座る中学生の息子が物知り顔でこう言った。

「それ多分、『お多福女』だよ」

「お多福女、何だそれ?」

主人が息子の顔を見ながら尋ねる

「この間ネットの掲示板で見たんだけど、お多福女というのは幸せな人にしか見えない奴で、見ちゃうと猛烈に死にたくなるんだって」

「何だそれ?」

主人がそう言って、グラスのビールを吹き出しそうになった。

「知らないよ、ネットの掲示板にそう書いてあっただけ」

と怒り口調で言うと息子は立ち上がり、さっさとリビングを出ていった。

公立高校入試の合格発表を一週間後に控えていた息子の神経は少々逆立っていたようだ。

ちょうどそれから数日経った日のこと。

朝の掃除と洗濯を終え食卓テーブルに座りテレビを見ていると、玄関の呼び鈴が鳴る。

扉を開くと、若い健康そうな男女が微笑みながら立っていた。

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