両親が体験した話です。
結婚して何年目かの冬、臨月の母がこたつでもうすぐ生まれる子ども(私)のくつ下を編みながら、父の帰りを待っていた時のことです。
時計の秒針だけが聞こえる静けさの中、遅いなあ、また麻雀だろうなあと思いながら編んでいたそうですが、気付いたらつっぷして眠っていたそうです。
ふと顔を上げると、いつのまにか目の前にコートを着たままの父が座っていて、じっと母のことを見ていたそうです。
驚いて「いつ帰ってきたの」と言うと「さっき」と言い、編みかけのくつ下を指して「これなに」と聞いたそうです。
母は数日前からそれを編んでいたので、変なことを聞くなと思いながら、お腹をさすり「この子のだよ。コートぐらい脱いだら?」と言うと、父は何も言わず、しげしげとくつ下やかぎ針を触っていたそうです。
(ああ、酔っぱらってる)
と思った母は「またこれでしょ」と言って、麻雀の牌を混ぜる手付きをすると、父はおもしろそうにその手付きをまねしながら「これ?」と言ったそうです。
からかわれていると思った母は「もう。お風呂入ってらっしゃいよ」と言いながら編み道具を片付け始めたそうです。
すると父は立ち上がって脱衣所へ歩いて行き、そのまま風呂場のドアを開けて中へ入っていったそうです。
「ちょっと、着たままじゃないの」
そう言って母が脱衣所へ歩き出した、その時でした。
目の前の玄関のドアがガチャガチャと鳴り、「父」が入ってきたそうです。
わけがわからず呆然としていると、その表情を見た父が「なに、どうした」と言った瞬間、風呂場から
「ギィィヤァァーッハッハッハッハッハッ!」
という笑い声が響いたそうです。
母は腰を抜かしてその場にへたり込み、父は土足のまま脱衣所へ駆け込んで、風呂場のドアを開けたそうです。
するとそこには誰もおらず、土や砂利がばらまかれたように散らばっていたそうです。
両親曰く、その声は「男なのか女なのか、人間なのかもわからない声だった」そうで、 今でもそれだけは忘れられないそうです。

























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