つんつくてん
投稿者:ぴ (414)
まるで見られたくないかのようで、私は次第に家の中から見るようになりました。
じっと見ていると、たぬきのかぶりものが3匹できつねのかぶりものが4匹、合計7人で行列を作っているみたいでした。
「つんつくてん」といい音を奏でるのはたぬきが持っている太鼓からみたいでした。
私は行列をもっと間近で見てみたいと思ったのです。だから庭で草むしりをして行列を待ったりしてみたのですが、そういう日に限って祭りの練習はありませんでした。
周りの人にそれとなく情報収集してもまったく知らない祭りだったので、本番がいつあるのかも分からなかったです。
見たいけど見れないジレンマでとても残念に思っていたのですが、ある日の夜ふと目が覚めたら耳にあの「つんつくてん」というおなじみの音が聞こえてきて、私は慌てて飛び起きました。
時計を見てみると、深夜の2時前くらいだったと思います。
こんな夜にあの音を聞くだなんてと驚きました。私はその「つんつくてん」の音に誘い出されるようにして、家を出たのです。
前の通りをあの被り物を被った人たちが練り歩いていました。初めて外で間近に見られたことに感動しました。
こんな夜中に祭りがあるなんて驚いたし、だから知らない人が多いのかと思ったのです。
こんな真夜中に見に来る人なんていないんじゃないかと思ったのですが、よく見たら見物客がいました。
隣の隣に住んでいるよく知っている老夫婦と、偏屈だと有名なおじいさん。
それから私は見たことがない知らない男の子でした。
4人は行列を見物した後、この行列の後ろを着いて歩き出しました。
私はそれを見て、とっさに私も着いていこうかと迷いました。この祭りがどうなるのか見届けたいと思ったし、この祭りが何の祭りなのか知りたかったからです。
こんな真夜中に行っている祭りをなぜか疑うことはなく、ずっと気になっていた祭りが何なのか明かされると頭がいっぱいでした。
しかし、丁度着いていこうと思ったときに、ガチャっと家の玄関の戸が開きました。
そして姑が「何をしているの?」と私に話しかけたのです。
ハッとしたときには、目の前は真っ暗闇で何もありませんでした。
私は夢遊病患者のように夜中に庭にぬっと立っていたのです。
さきほどまでの賑わいがうそのように静かで、祭の太鼓の音が消え去っていました。「さっき祭りが」と姑に話しましたが、もう行列も他の見物客もいなくて、「もう寝なさいね。疲れてるのよ。」とただただ心配されてしまいました。
私は後で振り返って思うのです。
私はあの日、恐ろしい祭りに参加してしまっていたんだと。
あれからしばらくして、相次いで人が亡くなりました。
そしてその全員があの祭りの見物客だったことに私は気がついてしまいました。
まず池で溺れて5歳の男の子が亡くなりました。
でもそのときは顔をよく知らなかったために祭りと関係があるなんて思いませんでした。
しかし、それを追うように隣の隣に住む老夫婦が事故で亡くなったと聞いて私はぎくりとしました。
そして最後に偏屈で有名だったおじいさんが持病で亡くなったと聞いて、ぎょっとしたのです。
もし、あの日私があの人たちと同じように祭りの行列に着いて行ってしまったら、今頃私はあの世だったかもしれません。
百鬼夜行ですかね