私は以前、病棟看護師として勤務しており、外科系の科でかなり多忙でした。
ナースコールを何人も押すため何重にもナースコールが重なりコールを消しても消しても他の患者さんがコールを押すため休む暇なく働く様な病棟でした。
その日もいつものように忙しい夜勤でした。
ナースコールがなり他の患者さんを車椅子に乗せてトイレに向かっていました。
今は個人情報の関係で患者名を病棟の外に掲示しないのですが、少し前まで患者名を病棟の部屋の前に掲示していました。
病棟の構造としてトイレは病棟の一番端にあったためその患者さんをトイレに連れて行くまでに長い廊下を車椅子を押し移動してました。
602号の前を通る際に廊下から見える位置のベッドがあり誰かがナースコールを押さずに手をあげているのが見えました。
車椅子を押しながらであったことと、夜中であったため手を上げている患者さんに「待ってて」や「今から行くからね」などの声かけをすると他の患者さんが私の声で起きてしまうと考えてトイレに部屋が近かったこともありすぐに向かうことができると考えその方に声を掛けませんでした。
車椅子トイレの患者さんをトイレに移した後、誰が手を上げていたのか思い出そうとしましたが、誰のベッドだったか思い出せませんでした。
すぐにトイレが終了し患者さんをトイレから病室にもどる際に部屋の前の患者名を見たら空床のベッドでした。
その時は忙しすぎて自分が勘違いしたと気にもとめませんでした。
夜勤も終盤になりゴミ捨て場にゴミを捨てにいっていた際に、頭の上の方からしゅりしゅりかちかちと不思議な音がした時に、昔に霊感のある先輩から怖いと思ったときにはその怖いことに反応したり怖いと思うとその怖いものに気付かれるため、意識を向けないこと、意識を向けてしまっても私は何にもできないです、ごめんなさいと思ってその場を去るといわれていたことを思い出し、意識を向けないように気づいていないふりをしてゴミ捨て場をでました。
ふと腕を見ると鳥肌が立っており、今までに感じたことのない怖さと、怖さを感じた時に手を上げていた患者さんが頭に浮かびました。
その後、同僚にその話をしたら、この前亡くなった声が出せない患者さんじゃない?と言われました。
その後に先輩からあの患者さんは私のことを好きだと筆談でいっていたと伝えられました。
確かに、その患者さんとは生前家族や身よりがなかったため、退院後の生活を整えるための手続きをソーシャルワーカーと話したりと一番関わっていたのは私でした。
その患者さんは、気難しくほとんど家族とも絶縁し他の看護師や医療職とはコミュニケーションを図らない方でしたが、私とは身振りや筆談でコミュニケーションを取ってくれていました。
私はあの時、恐怖を感じてしまいましたが、あの亡くなった患者さんは私にどんな感情を向けて手を上げ、音を鳴らしていたのだろうかと今もたまに思い出すことがあります。
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