捨て子の敵討ち

私の祖父が言っていた話です。

その時代はまだ子どもを置き去りにする親が絶えなかったそうで、散歩していたら赤ちゃんの死体を見つけることがあったそうです。

ある時、子どもを連れた母親が行方不明になったという話が広まりました。警察も捜査をしていたようで、目撃証言を聞き出そうと警察官が家を巡回していたそうです。
そんな中、1人の男性が有力な目撃証言をしました。

「腕っぷしの強そうな男が、女の首を片手で絞めているのを見た」

その男性は当時精神的に参っていたので、証言の信憑性は低いと判断されました。しかし他に証拠が出なかったため、念のため警察官が現場を見に行ったそうです。
現場には捨てられた赤ちゃんの死体がありました。首を絞められた女性はそこから少し離れた山の中に捨てられていて、遺体は山犬などに食べられてボロボロだったそうです。そのためどうやって殺されたのかも分かりませんでした。

調べを進めるうちに女性が赤ちゃんの母親であることが分かり、『赤ちゃんを置き去りにしようとしたところを襲われた』と警察は判断しました。
そんな矢先、もう1件同じような事件が発生したのです。

手で首を絞められた女性の遺体が発見され、女性の夫は
「子どもを捨てに行ったら帰ってこなかった」
と証言しました。しかし現場に赤ちゃんはおらず、それらしき証拠も見つかりません。警察は赤ちゃんの似顔絵を描き、隣町までビラを配って探しました。
いよいよ捜索が打ち切られようとしたある日、赤ちゃんによく似た子どもが見つかりました。顔には赤ちゃんと同じアザがあり、ついに見つかったものと思われました。しかしその子は保護された翌日、再び姿を消してしまったのです。

人々が事件を忘れかけていた頃、東京で赤ちゃんを連れた母親が殺害されました。その時最先端だった防犯カメラには、赤ちゃんを置き去りにしようとする母親と、彼女を殺す男性の姿が映っていました。
カメラに映っていた男性の顔には、姿を消した子どもと同じアザがあったそうです。