田川さんが小学校低学年の頃の話。
学校が終わって放課後、一人で下校中に後ろから「君、ちょっといいかな」と声をかけられた。
振り向くと知らない男の人が一人立っていて田川さんの顔をじろじろ眺め回している。
そして「君、タガワジュンイチ君・・・だよね?」と訪ねてきた。
男は整った身なりで小柄な体格、そして穏やかそうな目元をしていて田川さんは特に警戒することも無く「はいそうです」と答えた。
「やっぱり!・・・いや~随分大きくなったなぁ~」と男は目尻を下げながら言った。
親戚の誰かだろうか。思い出そうと頭を回転させるが出てこない。
「おじさん誰?」という質問が喉元まで出かかったが、
「お父さんは元気にしてるか?」と先に質問をかぶせられてしまった。
「うん、元気だよ」と答える田川さん。
「そっかそっか。お父さんとは仲良いか?」
「うん、いいよ。」
すると男は更に目を細め、
「お父さんのこと、好きか?」
と、質問を重ねてくる。
「うん!好き!」
すると男はいきなり田川さんの腕を掴むと力強く引っ張り上げ、もう片方の手で懐から注射器のような物を取り出すと田川さんのむき出しの腕にそれを突き立てようとしてきた。
田川さんは力一杯身をよじり、暴れ、大声を出しながら必死で抵抗した。
幸い近くにいた大人数名がすぐ駆けつけくれて男を田川さんから引き剥がすと地面に組み伏せた。
それから10分もしない内に警察が到着し、男は児童に対する暴行容疑で現行犯逮捕された。
田川さんに怪我は無かった。
頭のおかしい男が無事捕まりめでたしめでたし・・・と思ったのも束の間、男はその後の警察の取り調べで「田川君の父親とは同級生で、子供の頃凄惨なイジメを受けていて恨みがあった。次は絶対やり遂げる」と供述しており、地方紙にも事件概要が掲載された。
結局、田川さん一家は身の安全の為に遠くの土地への引っ越しを余儀なくされたという。
あれから男は田川さんの前に姿を現すことはなかった。
しかし事件以来、父親に対する尊敬や信頼の念は消え失せてしまったと田川さんは声を落とした。
諦め悪すぎて怖すぎ
凄惨なイジメを受けていても、しかたないこととして諦めろというんですね?
いじめるやつが絶対悪い。
虐めた父親はこれから一生怯えて暮らせ
田川さんショックだったと思うな