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ヒトコワ

phoenixさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

彼女の「居場所」
短編 2026/01/18 08:37 90view

これ、俺が大学のゼミ仲間だったA子から聞いた話です。

久しぶりに会った彼女は、ガリガリに痩せていて、俺の顔を見て話しているはずなのに、視線だけはずっと俺のすぐ後ろの壁を気にしていました。

「誰か立ってるの?」って聞いても、「ううん、何も……」って力なく笑う。でも、目がずっと泳いでいる。

彼女が震える声で、ぽつぽつと話してくれた内容です。

A子は学費のためにキャバクラで働いていて、そこでBさんという常連客と知り合ったそうです。

その人は全然ガツガツしてなくて、いつも「無理しなくていいよ」「君は頑張りすぎだ」って優しく声をかけてくれる人だった。

ある日、A子が足を痛めた時も、何も言ってないのに

「左足、痛むでしょ。今日は早く帰りな」

って言われたらしい。

その頃は、「この人だけは分かってくれてる」と思っていたそうです。

でも、少ししてから変なことが起き始めました。

夜、一人で歩いていると、すぐ後ろで誰かの呼吸が重なる。

振り返っても誰もいないのに、首のすぐ後ろに、熱い吐息だけが残る。

それをBさんに話すと、彼は少しも驚かずに、こう言ったそうです。

「最近、眠れてないでしょ。家でも落ち着かないはずだよ」

実際その通りで、わざと遠回りして帰っていることも、電気をつけたまま寝ていることも、「なんとなく分かる」と言って言い当てる。

A子は怖くなりながらも、いつの間にかBさんにしか相談しなくなっていました。

そのうち、体にも異変が出始めたそうです。

夜、布団に入ると、指が勝手に動く。

自分の意思じゃないのに、誰かに触られているみたいに、首や胸をなぞる。

A子は泣きながら、俺に首筋を見せてくれました。

内側から浮き出たみたいな、赤黒い指の跡がはっきり残っていました。

金縛りの時には、真上から「二つの目」が覗き込んでくる。

そして、Bさんと同じ声で、「大丈夫、支えてあげる」って囁く。

一番怖かったのは、鏡を見る時だと言っていました。

笑いたくないのに、顔が勝手に笑う。

中から、誰かに無理やり動かされてるみたいだったそうです。

A子は限界になって、店を辞めて実家に帰りました。

駅でBさんに最後に会った時、彼はいつも通り穏やかに言ったそうです。

「安心して。今夜もちゃんと見てるから」

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