興味本位のきもだめしにはご注意を
投稿者:蔦男 (4)
青森県の弘前市には久渡寺という古い寺がある。
これは私の学生時代の先輩がそこで経験した話だ。
久渡寺に数人ときもだめしにでかけた先輩は仲間の三人と車で寺がある山の麓までやってきた。
銭湯に出かけた帰りに湯冷まし感覚で寄ったのだが、山には当然ながら街灯などないので、隣の人の顔さえよく見えないほど暗かったらしい。
携帯電話のライトを使いながら、本堂まで続く長い石階段をひたすら登っていくと静まり返った本堂がのっそりとたたずんでいるのが見えた。
そこで先輩は奇妙な感覚に襲われた。誰かに見られているような視線を感じたらしい。もちろん後ろからついてきている他の3人のものではない。
首の後ろがぞわぞわするような感覚に襲われ、先輩は他の3人を連れて一目散に石階段を駆け下り、麓に止めてあった車に乗り込み発進させた。
「どうだった、お化けとかいた?」
3人の内の1人に感想を尋ねられた先輩はお前も一緒に見ただろう、と振り返らずに言うと、その人は「自分は行ってない」と答える。
その人は、ボロいサンダルで来ていたものだから、参道を上る途中でサンダルが壊れてしまい、階段を上ることができなくなってしまったそうだ。
だから、先に下で待っている、と階段を上がる先輩たちに声をかけて、それに対して先輩たちも分かったと答えた、と言うのだ。
つまり本堂には先輩を含んで3人しか行っていない、ということになる。だが先輩ははっきりと自分の後ろに3人の人間の気配を感じていた。
では、一緒に階段を上った人は誰だったのか、という話題はもう車内ではされなかった。
次の日から、本堂まで行った3人は40度近い熱を出して、まる3日寝込んだ。
地元の人の話では、久渡寺は夜に参ると何かに憑かれる、という話で有名で、下手なきもだめしには向かない場所と言われている。
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