トレインしてよかった
投稿者:with (43)
田舎の大学に通ってる俺は、大学で知り合ったAとよく履修科目が被っていることから、よく行き帰りを一緒に行動してたんだ。
この日は、午前中で履修している授業が終わったもんだがら、Aと一緒に昼を済ませ、その足で駅に向かった。
と言うのも、俺は県外から出てきて一人暮らししている身で、大学から何駅か離れたちょっと都心よりにアパートを借りていて、Aもまた、都心に近い実家から通っていたんだ。
それで、駅にやってきてからしばらく待つと10分くらいで電車が来て、俺とAは乗り込んだ。
昼間なので閑散とした電車内。
俺達は、降りる時のことを考え改札が近い車両に移動して、人が両手で数えるほどしかいないこともあり、扉の近くで立って話し込んでた。
しばらく談笑していると、車両の奥から男が一人よたよたとやってきて、Aと話している内に俺の後ろを通ったらしく、俺の視界からは消えた。
まあ、ただ車両移動している風景なんて見慣れているから気に止めてなかったんだが、どうにもAの表情が険しいもんだから、俺は首を傾げた。
それから目を丸くしたかと思うと、視線をそらして小さく吹き出すA。
俺は意味が分からずに、
「どした?」
と聞くと、Aは未だ広角をあげながら笑いを堪えている面持ちで俺の耳元に顔を寄せ、小声で、
「後ろ」
と呟いた後、我慢できなかったのか下を向いて肩を揺らしていた。
俺は怪訝な目でAを見た後、渋々後ろを振り向く。
「!?」
俺は目を丸くした。
そこには、先程車両移動していた男がEX〇LEのチューチュート〇イン宛ら全身を使って綺麗な円を描いていた。
よくよく見れば結構歳のいった中年で腹も出ており、無精髭もあれば、服も洗ってないのか少々ボロい。
しかし、その体型からはとてもじゃないが想像できないしなやかな動作は、体に染み込んだ習慣を自然と行うように無駄のない優雅な動きだった。
男の眼差しが俺の怯んだ目を見て訴えかけている気がした。
踊れと。
気がつけば俺は扉側に向き直り、下半身のバネを活かしつつ上半身で円を描く。
扉の窓にうっすらと反射すると俺と、その背後で回る男。
そこで俺は自分が先頭なのだと自覚し、右手で空気をかき回す動作も付け足す。
すぐ横でAが抱腹絶倒する姿を眦で捉え、少ない乗車客の視線もなんのその、俺と男は次の停車駅まで回り続ける。
車掌のアナウンスが聞こえると、いつの間にか男は俺の後ろから立ち去っていた。
Aが俺の肩を叩いて一言「面白すぎ」と感想を述べ、俺も一息つけたことに安堵した。
「あれ何だったんだろ?」
「波長合いすぎてヤバかったわ」
怖いけど面白いが勝ってしまうw
こういうこと咄嗟にできる人すごいと思う
不謹慎かもですが、面白過ぎて何度も読み返しました。