かすかな女の子の声に戦慄した

あれは暑い夏の日だった。
当時19歳だった私は刺激的なことを求めて、いつも遊んでいた友人たちと地元ではそれなりに有名な心霊スポットに行くことになった。

実はそれまでもいくつかの心霊スポットを巡っては肝試しをしており、その日行った場所に行くのは私は2回目だった。田んぼの中だがそこだけ林のようになっており、その中心に家がある。今思い返しても明らかに異様な雰囲気だった。初めてそこに行ったときは中にも少ししか入れないほどに怖かった。

今回は2回目なので若干の余裕がある。夜中に集まり、友人の車に乗り込み、その日は男4人でテンションも上がり気味だった。一軒家の廃屋で噂では昔、家族で住んでいたらしい。家の中にはまだ年賀状らしき葉書や生々しい生活の跡がたくさん残っていた。レンガのような玄関の崩れたところから中へ入っていく。最初に行ったときは3人で中々にびびっていたが今回私は2回目でそれなりに余裕があったが、やはり内心はビビりなので友人が先頭で私は2番目だった。

その日、先輩が動画を回していたことにはまだ誰も気づいていなかった。といっても暗いので声しか入らない。
中は荒れ果てて、床が抜けたりとはっきり言って危険な状態。今にも崩れて怪我をする可能性もあった。

1階にピアノがあることを知っていた私は調子に乗り、友人を驚かすために鍵盤を激しく叩いた。そんなこんなでだいたい家の中を回り終え、それなりに楽しんだが、その日も特に何も無く終わった。帰りに別の若者グループとすれ違い、どうでしたか？と聞かれた。カッコつけて何もなかったよ。と答えた。

そう、その日は何もなかったはずだった。。

後日、別の先輩に会い、心霊スポットに言ったことを話した。すると一緒に行っていた先輩が初めて、携帯(当時はガラケー)で動画を取っていたことを私たちに告げた。何で今まで黙っていたのかと少しゾッとしたが、好奇心に駆られ、その動画(暗闇の中なので音のみ)を別の先輩に見てもらった。すると、その先輩が不思議なことを言い始めた。

「お前ら女の子も一緒に行ったと？」

私は言葉が出なかったが、かき消すように、ビビらせないでくださいと言った。
「いや、本気で」
とその先輩が続けてくる。
みんなで慌てて確認をしてみる。

動画は暗くて見えないが、実はその心霊スポットに行った日、私が廃屋の中でたまたま友人から着信があり、今心霊スポットに来ていると冗談交じりに話をしている声がはっきりと入っていた。
次の瞬間、少し間があり静寂になったかと思うと、かすかに女の子の声で

「何回言っても来てくれないんだから」

と千切れそうな声が入っていて一気に鳥肌が立った。

その後その場にいた友人全員がその声を確認した。
念のため別の友人の携帯に動画を送って聞いてみたが、同じように声が入っていた。私たちはさすがに気持ちが悪くなった。

改めて確認だが、その時は男4人しかいなかった。あまりにも非現実的な出来事に戦慄せざるを得なかった。

その後、すぐに塩とお酒を買って車をお祓いした。動画も削除した。
それから私たちはふざけて心霊スポットに行くことを辞めたのであった。今思い出してもあの日のことを鮮明に覚えている。