家族全員が焼け死んだ家の話
投稿者:せいん (8)
大学のゼミの飲み会でたまたま隣になった女の子が言うには、ぼくたちの大学の近くには焼けた家屋があるらしいとのことだった。5年前に火事になって、住人だったとある家族が全員焼け死んだのだとか。「これから行ってみない、肝試しにさ?」と彼女が言うので、その場にいた何人かのゼミ生が乗り気になった。飲み会が終わって、それっぽい時間帯になったので早速向かうことにした。
飲み会は大学の近くのチェーンの居酒屋で開催されていたので、例の家屋まで行くのはすぐだった。酔いの勢いがってのことだけれど、件の家を目の前にすると妙な不安感に駆られた。怖いと言えば、そうだ。なにせ、夜更けに人死があった場所に来ているのだから。その家は確かに火事があったのだろう。焼けた家が倒壊しそうになったまま、放置されている。「さあ、行こう」と彼女に誘われるまま、僕たちはその家に立ち入った。
穴の空いた屋根から月明かりが入ってくるけれど、ぜんぜん頼もしくなかった。酔いも覚めてきて、早く帰りたいと思うようになっていた。他のゼミ生もそんな具合だった。「実は、ここ私の家なんだよね」と彼女が言うので、耳を疑った。冗談を言うな、とぼくが顔を顰めて言うと彼女は笑って、「まあ、冗談なんだけどね」と答えた。それから、もう帰りたいと言い出したゼミ生の言葉で今夜はもうお開きにすることにした。呆気ない終わり方だったか、正直安堵した。
……ところで、肝試しをしようと言い出した彼女の名前はなんだっけ? 知っているはずなのに、思い出せない。今となっては、そんな女の子がいたのかどうかすら、曖昧になっている。他のゼミ生たちに聞いても、そんな女の子はいないと言っているのだが、果たして……。
都市伝説的な話でゾクッとした