行き着く先は同じ精神科
投稿者:せいん (8)
短編
2022/04/14
07:12
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もう何年も受診していないが、数年間、うつ病と不眠症の治療で精神科に通院していた。
実際に受診してみて、こんなにも病んでいる人がいるのかと驚かされた。
いつ受診しても大体混んでいたし、診療時間前に足を運んでも長蛇の列ができていることがざらにあった。
ある日、その列の中に見覚えのある男性がいた。
その人とは小学校と大学が一緒で、交流は一切なかったが、天然パーマが特徴的で覚えていた。
また、私が在籍していた市役所の採用試験で真後ろに座っていた人物でもある。
結果的に、彼は一次試験(筆記)で落ち、私はその市役所に採用された。
その後も何となく彼の動向が気になり、時折、フェイスブックで彼のページを覗くと、自虐的な書き込みがなされていた。
アニメの声優という夢を諦め、定職に就けないことを嘆く内容だった。
おそらくは公務員試験も手当たり次第に受けたのだろう。
一方で、私は7年もの歳月を経て、ようやく公務員という夢を叶えはしたが、諸事情から精神を病んで休職・退職することとなった。
休職に先立ち受診した精神科での偶然の再会。
公務員試験の時と逆で、今度は私が彼の真後ろに並び列を作っていた。
彼と私では受診に至る過程は異なっても、行き着く先は同じ精神科であることに、同じ病人としてある種の因縁めいた、不思議な縁を感じた瞬間だった。
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