私にだけ見えない藁人形
投稿者:gray (9)
私も当時は怖いものが好きだったので、ぜひ見たいと思い、みんなが順番に穴を見終わるまで、後ろの方で待っていました。
本物の藁人形なんて見たことがなかったし、どこで見られるのかもわからないので、これは良い機会だと思ったように記憶しています。
当時、仲の良かったYちゃんと一緒にみんなの後ろに並びながら、自分たちの順番が来るのを待っていました。
穴を覗いたみんなは「本当だ」「怖いね」などと話しており、私の期待も高まります。
ついに自分たちの番が来て、まずはYちゃんが先に穴を覗きました。
穴を覗いたYちゃんはほかのみんなと同じように「ヤバいよ本当にある!」と言いました。
ついに私の番になり、ドキドキしながらその狭い穴を覗きこみました。
しかし、私に見えたのは、藁のような物が数本落ちているだけでした。まるで、掃除のときに使うほうきのわらのようでした。
見る角度が悪く、もう少し奥の方にあるのかな、と見る位置を変えてみたりもしたのですが、何度見てもほうきのわらのようなものが落ちているだけです。
理科室の掃除は生徒が行うのですが、誰かが掃除当番の際に、ほうきのわらを抜き取っていたずらで落としたのかな、と思いました。
落胆しながら顔を上げた私に、「ね、本当にあったね」とYちゃんが言いました。
周りのみんなも興奮気味に話しており、私は何も見えなかったのはなんとなく言いづらく、「うん、見えた見えた」とその場の雰囲気に合わせました。
実は私のように見えなかった人もいたのではないかと思い周りを見回しましたが、みんな藁人形が見えたと興奮気味に語り合っており、どうやら私以外の人全員に、藁人形が見えているようでした。
この話はあっという間に他の学年にも伝わり、授業や掃除当番の際に穴を覗きこんで、藁人形が見えたと話す子が上級生の中にも出てきました。
理科室を使って授業をするのは4年生からで、使わないときは鍵を閉めて入れないようになっていたこともあり、昼休みなどに生徒が詰めかけて大変なことになった、というようなことも起こらなかったからか、学校側がこのことに対して何か対処をすることはありませんでした。
その後、理科室の掃除当番をすることがあった際に、私はやはり見えないかと穴を覗きこんだのですが、見えるのは相変わらずわら数本でした。
他の子が覗き込むと「まだあるね」などと言っていたので、藁人形はそこにずっとあったようです。
今考えると、藁人形が見えると騒いだのがクラスでも発言力の強い子だった、さらには影響を受けやすい子どもだったこともあり、同調圧力のようなもので見えると騒いでいただけなのではと思います。
しかし、わら数本と藁人形をどうやったら見間違えるのか、やはり不可解でなりません。
また、私同様、Yちゃんも見えないと言いづらかっただけなのではないかと思い、後に「あれさ、実は私には見えないんだけど、本当に見えたの?」と思い切って聞いてみたのですが、Yちゃんはきょとんとして「見えるよ。何言ってんの?」と不思議そうでした。
20年以上昔のできごとですが、未だに不思議でなりません。
不思議な話ですね
心が綺麗な人には藁人形が見えなかったのかもしれませんよ