北海道で出会った神の使い
投稿者:gray (9)
これは2018年の3月上旬のできごとで、私の夫が体験した話です。
その頃私は第一子を妊娠しており、仕事を辞めて、初めてのことなので実家にて里帰り出産をするために帰省していました。
私の夫はフリーランスで働いているのですが、当時は収入がそれだけでは少し厳しいので、塾講師のアルバイトもしていました。
次の授業の準備や面談で話す内容を決めたりなど細かな作業が多く、帰宅はどうしても22時以降になります。他の講師との打ち合わせが必要なこともあり、そうなると日付をまたいで帰ってくることもありました。
当然ながらアルバイトなので育休は取れませんし、本業もあるので産後1カ月は私だけでは絶対に厳しいだろうと話しあい、1月ごろから私は実家に帰省していました。
夫の職場では有給取得には寛容で、アルバイトでも有休を取得できます。しかし塾ということもあり、授業の関係で有給を普段取るのは難しいです。
ところが、有給が溜まっているので消化してほしいと職場から言われたため、2月末に夫は一人で東北方面に旅行に行くことにしたのです。
夫の本業はパソコン1台あればできるものなので、ホテルで仕事ができるだろうと考えた彼は、家に自分ひとりでいるのももったいないからと、1週間ほど東北地方に1人旅へと行くことにしたのです。
夫は旅先から、五稜郭や五平餅といった写真を送ってくれたりしたので、一人旅を満喫しているのだなぁと実家でのんびりすごしながら私も写真を楽しみにしていました。
基本的に貧乏旅行なので、タクシーは利用せず、バスや電車などの公共交通機関を利用しながらの旅だったようです。また、元々長距離を歩くことにそれほど抵抗がないので、歩いて次の目的にまで移動する、ということもしていたようです。
そして3月上旬のある日のこと。夜の18時半ごろだったと思います。
夫からLINEがきて、北海道のとある駅から次の駅まで歩いている、と連絡がありました。
電車が止まってしまい、次の電車が来るまでかなり時間がかかるようなので、乗り換えの駅まで歩くことにしたというのです。調べる限りだと1時間くらいで着きそうだ、とのことでした。
3月とはいえ北海道は寒いですし、大丈夫なのかと思っていると、しばらくしてまた連絡がありました。
道があっているのか不安になったので、ネットで調べて地図を送ってくれないか、というものでした。
電話で話をした方が早そうなものですが、スマホの充電が少なくなってきているとのことでした。しかも充電器も使えない状態。
ポケットWi-Fiだけは持ち歩いていたので、通信環境に関してはどうにかなっている状態でした。
私は自分のノートパソコンを持って行っていたので、それでグーグルマップを開いて、夫の言う駅を調べました。
すると、さすが北海道というべきか、駅と駅との間には、地図で見る限りはお店などは一切なさそうでした。
しかし幸いなことにほとんど一本道で、迷う心配はなさそうでした。ただ、途中で分かれ道が一つだけあったため、そこさえ間違えなければですが。
私は念のため地図の画像を添付して、夫にそのまま歩いていけば次の駅に着くはずだとLINEを送りました。そして、分かれ道があるのでそこを間違えないように、ということを伝えました。
それから1時間くらいして、夫からは無事に次の駅に着いたという連絡がありました。
そして数日後、夫は北海道から無事帰ってきて、その足で私の実家までやってきました。
土産話を聞いていると、そういえば不思議なことがあった、と夫が話し始めました。
「地図を送ってもらった日にさ、真っ白い鹿を見たんだよね。しかも4頭も」
あの日、私から地図を送られた夫は、駅に向かう途中で家族連れらしい鹿を見たというのです。
とても不思議な体験だったけれど、ホテルに戻る時間が遅くなってしまったことから私に連絡をしなかったので、そのまま話すのを忘れていたとのことでした。
まだ3月だったこともあり、19時近い時刻なのであたりは暗かったそうです。街灯もあるにはあるけれど、恐らく車で移動する人がほとんどで地元の人でも歩くような場所ではなかったのでしょう。まったく人気はなかったそうです。
そんな中一人で駅を目指して歩いていくと、私が言っていた分かれ道らしきところにたどり着いたそうです。
ここの道を右の方に進めば良いはず、と夫は思ったそうですが、本当にそれで合っているのか少し心配になってきたそうです。
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