僕は反射的に目を逸らした。
「……なんだ、あれ」
声には出さなかった。
周囲を見る。
誰も気づいていない。
隣にいる女性もスマホを見ている。
後ろの男性も普通に電車を待っている。
誰一人、向かいのホームの異様な存在を見ていない。
僕だけがおかしいものを見ている。
そう思った。
そのとき、
向かいのホームに急行電車が入線した。
電車が怪異の前を通過する。
車両が何両も何両も続く。
やがて最後尾が通り過ぎた。
僕は恐る恐る向かいを見る。
――いない。
さっきまで確かに立っていた場所には、誰もいなかった。
その日は、そのまま電車に乗って帰った。
ただ、帰り道もずっと気になっていた。
あれは何だったのだろう。
見間違いだったのか。
誰かがふざけて、あんな格好をしていたのか。
でも、あの身体の曲がり方は普通ではなかった。
そして何より、
誰も気づいていなかった。
それが一番怖かった。
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以来、僕はその駅を使うのが少し怖くなった。
通勤の際は通らない。
この話は怖かったですか?
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