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心霊

キジニャンさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

雨の日の競馬場
長編 2026/08/17 04:01 321view

僕は思い出した。

小さい頃に会った叔父だった。

「いやー久しぶりだなあ!」

叔父はそう言って上がり込んできた。

競馬場帰りらしく、まだ土の匂いがしている。

「お前、顔色悪いぞ。競馬でも負けたか?」

僕は必死に今までのことを話した。

騎手の霊、追いかけてくる馬、夢、蹄の音。

叔父は最初こそ笑っていたが、途中から真顔になった。

「……その競馬場か」

そう呟くと、しばらく黙り込んだ。

そして、重い声で語り始めた。

「30年前のあの事故な、表向きは落馬事故ってことになってるが……実は違う」

僕は息を呑んだ。

叔父は続けた。

「あの若い騎手はな、レース前から先輩騎手や馬主連中に囲まれてた。八百長だよ」

「八百長……?」

「そうだ。本当は勝てる馬だった。だが“抑えて負けろ”って命令された」

雨の音が、急に遠く感じた。

「本来のシナリオはな、先頭集団の馬が壁になって、そのまま後続が伸びないレースにするはずだった。だがあの若い騎手は、最後まで迷ってた」

叔父は煙草に火をつけた。

「それでも大雨の中、無理やり出走させられた。結果、あの事故だ」

僕は震えながら聞いた。

「じゃあ……あの騎手は……」

叔父は静かに頷いた。

「恨んでるのは“事故”じゃない。自分を追い込んだ連中だろうな」

しばらく沈黙が続いた。

そして叔父は立ち上がった。

「その競馬場の裏手に、小さい慰霊碑がある。地元の連中しか知らん」

「そこに行け」

7/8
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