その時、ひとりが「あっ」と声を上げて指さした」
入口ドアのすりガラスに、ぬぼ~~っと人影が立っている。
タバコを吸っているらしく、口元に赤い光が見える。
「・・・なんだ、後藤先生だよ・・・」
懐中電灯を消していったん毛布に潜り込み、みんな寝たふりをした。
先生は何も言ってこない。もう帰ったのかな? そう思いチラリと入口の方を見る。
・・・まだいる。大柄な図体で、なにをするでもなく無言でぼ~っと立っている。
おかしい。なんなんだろう。入るでもなく、帰るでもなく。
「なぁ・・・あれ本当に後藤先生なのか?」
「シッ! 静かにしろ」
みんな声を殺し、聞き耳を立てて警戒している。
「な、なんでずっとあそこにいるんだよ・・・」
「俺たちが寝るまで帰らないつもりかな・・・」そう言うやつもいたが、
いや、あきらかに何かおかしい。
おかしいが・・・だからと言ってこちらからドアを開ける勇気もなかった。
自分らにできることと言えば、せいぜい毛布を頭からかぶって寝る事だけだ。
お守りをギュッと握りながら毛布の中で丸まった。
担任は、その後もずっとずっと扉の前に立っていた。中を覗き込むような姿勢で・・・。
やがて朝になり、まぶしいオレンジ色の朝陽がロッジ内にあふれた。
もう担任の影はなかった。
みんな寝不足気味にぞろぞろと起きだしてロッジの外へ出た。
山の稜線から登る朝陽なんてものを見たのはこれが初めてだった。
自然の美しさに改めて感動した。
朝食は施設側で用意したごはんに味噌汁、焼いたシャケの切り身などが出た。
不思議だったのは、朝から例の担任の姿が見えない事だ。
他の先生を捕まえて、後藤先生はどこかと聞いてみると
「後藤先生は用事があって先に帰りましたので、心配しなくていいですよ」
なんてことを言う。・・・おかしい。
「えっ、だって後藤先生、夜中じゅうずっとボクらのロッジの前に立ってたんですよ」
そういうと、何か急にこわばった表情になり
「今の話はみんなが怖がるといけないから、他の生徒には言っちゃゃダメですよ」と
クギを刺された。・・・いったいどうしたというのだろう。



























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