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心霊

御室真代さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

死を嗅ぐ
長編 2026/04/06 09:05 342view

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深夜2時半頃だったろうか。
なんだかんだ新幹線も使うような長旅だったので、いつの間にか眠ってしまっており、ハっと目が覚めた時にはこんな時間だった。音を立てないように部屋から出る。
俺の部屋を出ると、細い廊下があり、廊下の突き当たりが母の寝室だ。
当然電気は消えており、廊下は窓から差し込む月明かりで薄らと照らされているだけで、かなり暗い。ほとんど何も見えない。
部屋を出たあたりで、鼻を突き刺すような強烈な死臭がした。タンス裏の猫がフラッシュバックして、思わず手で口を抑える。辛い。心臓が高鳴る。母が寝ている寝室まで聞こえてしまうのではないかと思うほど、強く心臓が鳴り響く。やはり、この家のどこかに、何かが死んでいる。気の所為などではない。
次第に目が暗闇に慣れてきた。細い廊下の奥行きが段々と見えてきて、遂に母の寝室の扉が見えるようになった辺りで。
高鳴っている心臓が今度は止まりそうになる。
廊下の突き当たり、母の寝室の目の前に、誰かがこちらに背を向けて立っている。

さらに強烈な死臭が立ちこめてきたように感じる。
完全に暗闇に目が慣れると、その背中が、見慣れた背中であることに気がついた。
母だ。母が、寝室の前に俯いて立っている。
止まりそうになった心臓が、さっきの比にならないくらい早く高鳴っている。いくらなんでも異常すぎる。
体が凍り付いたように動かない。
どうしていいのか全く分からない。
しかも、さっきから死臭が。どんどん強くなっている。
これは、まずい。もう限界だ。早く、自室に引き返さなければ。

そう思ったその時、

「あんた、こんな時間に何しとるの?」

リビングの方から母が現れた。その瞬間、体が動くようになり、死臭が一気に薄くなる。酸素が脳まで行き渡る感覚がする。どうやら息が出来ていなかったみたいだ。

さっきまで寝室の前に立っていた母は消えていた。
俺には今の現象も、死臭も、気の所為には出来そうにない。
安心の象徴たる母が、化け物に見えて仕方なかった。

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結局あれから一睡も出来なかった。
これは悪夢だろうか。
それとも親父の葬儀に顔も出さなかった天罰なのか。
朝になって、コーヒーとトーストを準備する母の背中はいつもの背中で、昨日見た異常さを感じなかった。
自分の演技力というものを今まで自覚していなかったが、もしかすると役者になれたかもしれないと自画自賛する程には、昨日のことを抜きにして”普通”に母と接することが出来ている自分には驚いた。母も母で、昨晩のことを聞いてこない。死臭は相変わらず漂ってくる。昨日、実家に到着した時よりも強くなってるように感じる。

3/5
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