奇々怪々 お知らせ

心霊

御室真代さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

死を嗅ぐ
長編 2026/04/06 09:05 11,858view
0

部屋を出たあたりで、鼻を突き刺すような強烈な死臭がした。タンス裏の猫がフラッシュバックして、思わず手で口を抑える。辛い。心臓が高鳴る。母が寝ている寝室まで聞こえてしまうのではないかと思うほど、強く心臓が鳴り響く。やはり、この家のどこかに、何かが死んでいる。気の所為などではない。

次第に目が暗闇に慣れてきた。細い廊下の奥行きが段々と見えてきて、遂に母の寝室の扉が見えるようになった辺りで。

高鳴っている心臓が今度は止まりそうになる。

廊下の突き当たり、母の寝室の目の前に、誰かがこちらに背を向けて立っている。

さらに強烈な死臭が立ちこめてきたように感じる。

完全に暗闇に目が慣れると、その背中が、見慣れた背中であることに気がついた。

母だ。母が、寝室の前に俯いて立っている。

止まりそうになった心臓が、さっきの比にならないくらい早く高鳴っている。いくらなんでも異常すぎる。

体が凍り付いたように動かない。

どうしていいのか全く分からない。

しかも、さっきから死臭が。どんどん強くなっている。

これは、まずい。もう限界だ。早く、自室に引き返さなければ。

そう思ったその時、

「あんた、こんな時間に何しとるの?」

リビングの方から母が現れた。その瞬間、体が動くようになり、死臭が一気に薄くなる。酸素が脳まで行き渡る感覚がする。どうやら息が出来ていなかったみたいだ。

さっきまで寝室の前に立っていた母は消えていた。

俺には今の現象も、死臭も、気の所為には出来そうにない。

安心の象徴たる母が、化け物に見えて仕方なかった。

*

*

*

結局あれから一睡も出来なかった。

これは悪夢だろうか。

それとも親父の葬儀に顔も出さなかった天罰なのか。

朝になって、コーヒーとトーストを準備する母の背中はいつもの背中で、昨日見た異常さを感じなかった。

4/6
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。