35年前私が高校生だったころは、特に心が不安定で敏感だった時期がありました。その頃、夜寝ていると頻繁に金縛りに遭っていました。最初はただたえるだけでしたが、いつしか金縛りが起こりそうな日を予感する感覚を持つようになり、それが分かる日は寝るのが怖くて、朝まで無理やり起きて過ごすことにしていました。
ある夏の日、どうしても眠気に抗えず寝落ちしてしまうと、案の定金縛りに遭い体が動かなくなりました。その日は恐怖心に駆られながらも、何かを確認しようと目を開けてみることにしました。目を開けた途端、右側に何かの気配を感じ、そちらを目で追うと、なんと首から下のない、顔だけの真蛇の横顔が目に入りました。その姿に驚き、目を閉じよう試みましたが、体が硬直して思うように動きません。それだけでも十分恐ろしい状況だったのですが、真蛇がゆっくりとこちらを向いて目が合った瞬間、恐怖は頂点に達しました。震える体で何とか気合を入れて身を起こし、部屋の電気をつけ周囲を確認すると、そこにはもう何もいませんでした。時計を見ると時刻は夜中の2時半。ふたたび眠る気はなく、そのまま起きて朝を迎えるしかありませんでした。
翌日夜、再び金縛りに遭いました。恐怖を感じた私は目を閉じたままその状況に耐え続けていましたが、胸の上に何かがドンと乗った感覚が突然襲いました。その衝撃で目を開けてしまい、視線を胸元へ向けると言じられない光景が広がっていました。そこには昨日の真蛇が睨んでおり、私をじっと見つめていたのです。そして目が合った瞬間、私は恐怖のあまり気を失い、次に気付いた時には朝になっていました。
翌日、親しい友人であるAにこの出来事を話すと、彼は金縛りで鬼を見た時間について言及し、「確か2時半ごろって言ってたよな……」と考え込む様子を見せました。そしてしばらく頭を悩ませた後、おもむろに話し始めました。
「俺もその時間くらいに部屋で寝てたんやけど、急にトイレに行きたくなってな、それでトイレを済ませて部屋へ戻る途中、暗い台所で薄明かりが見えて、冷蔵庫が開いてるから『誰か夜食でも探してんのかな』なんて思って近づこうとしたんやけど……そこで気づいたんや。冷蔵庫の光で照らされてるのは、人間じゃなくて首から上のない何かやったんや。筋肉質な体つきのそれが冷蔵庫を物色している様子で……。ホントに怖くて動けなくなってな、何とか物音を立てないように静かに部屋へ戻って布団に潜り込んだんや。その後は震えながら朝まで過ごしたんよ。」
友人Aからこの話を聞いたことで、私自身の体験との奇妙な一致に背筋が凍る思いでした。同じ時間帯に、それぞれ異なる場所で異形のものと遭遇していたこと、
それには底知れぬ恐ろしさがありました。その夏の日々は、今でも忘れることのできない記憶として心に刻まれています。

























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