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不思議体験

真代さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

キキョウ
長編 2025/11/26 11:17 2,270view
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私が20代前半のことですから、もう何十年も前のことです。

東京でOLをやっている時、ひょんなことから、あまり良くないものに憑かれてしまったんです。
そうですね、それは例えば照明の届かない机の下に落としてしまった物を拾う時、暗闇を手探りで落とした物を探していると、”触れてしまう”んですよ。
ハッキリと、感触で分かるんです。人の手だって。
人の手が、暗闇の中でこっちを指さしてるんです。
びっくりして机の下を覗くと、女の人がこっちをニヤニヤ見つめ返してる。ってことが起こるようになって。
いつ現れるかは完全にランダムで、共通してるのは暗闇に現れると言うこと。色々試したけど、全く消えてくれなくて。暗闇が怖くて仕方なかったです。頻度もどんどん増えてきて、自宅にも現われるようになって、もうダメだと思った頃には、体調を崩してしまっていました。
お医者さんに見てもらっても、原因不明で、もうお手上げ状態。そこで、職場の同僚に紹介してもらった霊媒師の方に、1度見てもらったんです。

その霊媒師の方が言うには、指を指しているのは、明らかにこちらに危害を加えようとしている、タチの悪い悪霊だと。体調不良も全て、その霊の仕業だと仰られていました。

しかし、それを祓うには、大きな代償がいると。

代償とはなんでしょうかと問うた私に、霊媒師の方は真剣な顔をしてこう言うんです。

「最も大切な人の魂だ」と。

本当にそうするしかないのだと、そう思わせるだけの迫力を感じました。
怖くなって、ふざけるなと追い返すしかできなかったです。
結局、私が選んだ道は、故郷の田舎に帰り、自宅療養することでした。ストレスから解放されれば、何とかなると思ったのです。
まあ。どうせこのまま死んでしまうなら、故郷で。と言うのもうっすらと考えてしまっていましたね。

故郷に帰っても、全く晴れやかな気持ちになれませんでした。当然です。田舎でも、ほんの少しの暗闇に現れましたから。その頃には暗闇があれば必ず現れるようになっていましたから、田舎に帰ってきたことを後悔したくらいです。
私は両親も祖父母もその時既に亡くしており、一人っ子でした。家族はおらず、小さい頃みんなで暮らした家に1人ぼっちで生活せざるを得なくて、余計に怖かったんですよね、もういっそ、早く殺してくれ。そう思い始めてた頃、とある出会いがありました。

「あれ?ここ、人住んでたんだ」

眩しいくらいの気持ちのいい朝に、ランニングウェア姿で立っていたその子は、私と同じくらいの年代で、

少し童顔。可愛らしい顔立ちでした。
その時の私に精神的余裕は欠片もありませんでしたから、そんな失礼なことを初対面で言ってくる彼女のことを、受け入れるはずもなく。
彼女のことを無視して、やり過ごしました。
しかし、その次の日も、そのまた次の日も、彼女は毎朝家の前を通るんです。
そのうち、挨拶をするようになり、ほんの些細な会話をするようになり、意外にも、気が合うことがわかると、毎朝、縁側で話をするようになりました。
彼女と話している時間は、本当に幸せで、楽しくて、暗闇の怖さを、ほんの少しだけ忘れられる、唯一の時間でした。

次第に、朝の時間だけでは足りなくなって、私の家に招いてお茶をして、ここで初めて、私は故郷に戻ってきた理由を、暗闇の女が現れて、病気になって、霊媒師でもダメだった。ということを、打ち明けることにしたんです。
信じてくれないのではないか、鼻で笑われてしまうのではないか、嫌われてしまったらどうしよう。そう思って、中々言い出せずにいたのですが、勇気を振り絞って打ち明けた私に、彼女は変わらない綺麗な笑顔を見せて、こう言いました。

「じゃあ、そいつ、私がぶっ飛ばしてあげる!」って。
思わず拍子抜けしましたよ。

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