「じゃあ、今から許してもらいに行こっか」
〇
件の骨董屋は、疎水沿いの小径にある。ここからならそんなに時間はかからないだろう。が、あろうことかミコは足が無いといって、俺の自転車の荷台に腰掛けた。ここが坂の上でよかったと心底思う。自転車をこぎ始めるとミコが先ほどの話の続きをしてくれた。
ミコ曰く、俺に憑いているのは熊手の付喪神だという。
「熊手ってさ、本来、幸福だの開運なんかを引き寄せるってよく神社なんかでも売ってたりするじゃん? けどさ、引き寄せるものが“良いもの”だけとは限らないんだよね」
長年、店に幸福を招き入れていたのに、新参者の俺があっけなく捨ててしまったことをあの熊手は相当恨んでいるらしい。それで骨董屋に流れついた曰くつきな物を、嫌がらせのように俺のもとに引き寄せていたのだ。新井のじいさんのやつ、そういったことはもっと早く教えてくれよ・・・。
「あ、そうそう」
店に着いた時、ミコは俺に一枚の御札を渡した。もちろん、何が書いてあるのかはわからない。
「それ、ちゃんと持っておいてね。無くしたら最悪死ぬから」
あんまり俺を脅さないで欲しい。ミコが言うには付喪神と対面した際、普通の人間はその負荷に耐えられないことがあるようだ。これはそれを防ぐための御札。骨董屋で働くなら割とマストなアイテムな気がする。あとで貰おう。
そんなことを考えているとミコが店のチャイムを鳴らした。
「そのチャイム、生きてたんだな・・・」
しばらくすると、ガラガラと引き戸を開けて新井のじいさんが顔を見せた。よかった、今日は出かけていなかったようだ。
「あれェ、比売野のお嬢さんに少年、どうした? 何か用かね」
意外な組み合わせに思えたのだろうか。キョトンとした顔をして俺とミコを交互に見るじいさんに、ミコは事の経緯を話した。
「あぁ、そうかい。そんなことがねェ・・・」
事情はわかったから好きなように見ていきなさい、とじいさんはあっさり俺達をゴミ捨て場へと連れて行った。道中、俺はじいさんに聞いた。























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