ミコの的確な指摘にまあ、と曖昧な返答するやいなや、彼女は社務所まで真っすぐ歩いていくとおもむろにその扉を開けた。
「あ、おい怒られるぞ、勝手に入ったりしたら・・・」
慌てる俺を気にも留めず、ミコは靴を脱いでいる。
「大丈夫。ここ、私の家だし」
展開が早すぎて頭が追いつかない。ミコは「ほら早く入って」と俺に声をかけると、足早に中に入ってしまった。俺は考えることをやめて、彼女に従うことにした。
〇
外観とは打って変わって、中は思いのほか小綺麗だった。俺が入ったところは事務室のようで、学校でよく見かけるパイプ椅子と折りたたみ式のテーブルが整然と置かれている。壁には地元警察や消防団のポスターが貼られており、本殿側に設置された窓の下にはお守りがいくつも置いてあった。正月なんかはあそこで受け渡しを行うのだろう。初めて入った社務所の中に少し興奮しているとミコがお茶をお盆に載せて戻ってきた。
「おまたせー、なんかポットが壊れてて、お湯沸かすのに時間かかっちゃった」
コトンっと湯呑が机に置かれる。どうぞと促す彼女に、俺は軽く頭を下げて椅子に座った。音もたてずにミコはお茶をすすった。
「あのさ、」
俺が切り出すとミコは分かっていると言わんばかりにこちらに目を向ける。
「深山君さ、あの骨董屋でなんかしたでしょ」
今更、何かを取り繕おうなんて思いもしなかった。多分、彼女には俺には見えないものが見えている。俺はあの日のことを思い出すように話し始めた。
「ちょっと前に、倉庫の掃除をしろってじいさんに頼まれたんだ。そしたら、ボロボロになった熊手が出てきてさ・・・俺、それ捨てちゃったんだよ」
柄と爪がなくなってみすぼらしい姿になった熊手を思い出す。今思えば、あんなボロボロになっても捨てられずに置いてあったくらいだし、じいさんの大切なものだったのかもしれない。
「それで、その日からおかしいことが続いてさ。骨董屋の物が勝手にカバンに入れられてたり、家の中にあったり・・・やっぱ俺、悪いことしちゃったのかなぁ」
そう嘆く俺に、ミコは再びお茶をすすると「まあ悪いことって言っちゃあ、悪いことね」と頬杖をついて答えた。
「でも、これは事故みたいなものだし、祟られるほどのことをしたとは私は思わない」
そう言うと、ミコは立ち上がって俺に言った。
























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。