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不思議体験

辻村さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

漂着
短編 2025/11/09 20:06 1,414view

仕事の都合で、今の家に引っ越してきた直後の話です。

前に住んでいた部屋は家具家電付きの賃貸で、急な異動だったこともあり、
引っ越してすぐは冷蔵庫も洗濯機も無いような状況でした。
となると、食事は外食か、コンビニで温めてもらう弁当なんかになるわけです。
洗濯においても、近所のコインランドリーを利用しなければならないので、
引っ越してからちょうど三日経ったころ、歩いて五分ほどのコインランドリーへ向かいました。

それなりに年季の入った外観のコインランドリーに到着した私は、
持ってきた衣服を洗濯機に押し込み、店内の椅子に腰かけ、
洗濯が終わるまでスマートフォンで映画を見ることにしました。

洗濯が終わり、衣服を取り出そうと席を立ち、洗濯機のフタを開けたところ、
がしっ、と腕を掴まれました。

それは、私の服です。

そう言ったのは、夏だというのに薄茶色のトレンチコートを着た、背の高い女性でした。
困惑した私は、まず掴まれた腕を振り払い、彼女の顔に視線をやりました。
どこを見ているのかわからない、濁った眼。
力の入っていない、少し開いた口。
不気味なほどに青白い肌。
恐怖を感じながら、特になにもせず立ち尽くすだけの彼女から逃げるように、
私は衣服を回収してコインランドリーから逃げました。

変な人がいる地域に異動になってしまって災難だな、
もうあのコインランドリーには行かないようにしよう。
そんなことを考えながら私は帰路につきました。

翌朝のことです。
朝食を済ませ、着替えをしようと思った私はクローゼットを開け、
掛けてあった半袖のワイシャツに手を伸ばしました。

するとクローゼットの奥からずるっと腕が伸びてきて、
私の手首を掴みました。
骨に皮を貼りつけただけの、とても細い腕。

昨日と同じように私はその腕を振り払い、シャツをクローゼットから取り出しましたが、
私の胸は恐怖に高鳴り、シャツを持つ手の震えが止まりませんでした。
このシャツを手元に置いておいてはいけない。
そう直感した私は、朝の身支度もそこそこに部屋を飛び出し、
駅と反対方向にあるあのコインランドリーに向かいました。
これは、あなたの服です。
そう心の中で念じながら、私は店内の忘れ物カゴにシャツを置き、立ち去りました。

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