飲食店で働いていたころ、私はアルバイトの身でありながら、
スタッフのシフト管理を任されることが多々ありました。
そういった業務を行っていると、突然の欠勤などの対応に追われることもあるわけですが、
その日は連絡も無く、時間になっても出勤してこない女性スタッフがいました。
間隔を空けつつ電話をしても反応はなく、業務も特に忙しくなかったため、
法的にどうなのかはわかりませんが、私は社員の指示でそのスタッフの家へ確認に向かいました。
店舗から歩いて十五分ほどでしょうか。
スタッフの住むアパートに到着し、私はインターホンを鳴らしてみました。
開いています。
と中から声がしたため、私はゆっくりとドアを開きました。
小さな玄関、そして短い廊下に備え付けられたキッチンスペース。
典型的な1Kといった間取りでしょうか。
彼女は廊下の先にある部屋で、床に座り込んでいました。
彼女が精神的に弱っていて、出勤ができない状態にあるのかもと思っていた私は、
極力優しい声色で、彼女に話しかけようとしたところ、
廊下を横切るようにして、線状に盛られた塩が私の視界に入ってきました。
それは、結界なんです。
彼女がぽつりと、口にしました。
何を言っているのかわからなかった私は、彼女に尋ねました。
彼女はゆっくりと、震えた声で語り始めました。
同僚だったKに呪われていること。
Kが自死した原因は、彼女にあるかもしれないこと。
彼女がKに対して陰湿なイジメを行ったことへの報復だと思っていること。
容姿端麗で、店舗スタッフやお客様からも好かれていたKに嫉妬していたこと。
夜になると玄関から妙な物音がして、それが次第に大きく、近くなってきていること。
彼女は他にも何か話していましたが、私はよく覚えていません。
確かにKというスタッフはいました。
Kが自死したという噂は、私の耳にも届いていました。
彼女が冗談を言っているわけではないことは、表情を見ればわかりました。






















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