大学生の頃、一人暮らしをしていた時の話し。
寝る前に枕元へコップ一杯の水を置くのが習慣だった。
夜中に喉が渇くことが多かったから。
ある朝、水が半分になっていた。
寝ぼけて飲んだんだろう。
そう思って気にしなかった。
でも、それが何日か続いた。
ある日、友人が泊まりに来た翌朝
コーヒーを飲んでいると急に聞かれた。
「昨日、深夜誰かと電話してた?」
意味が分からなかった。
「夜中さ。女の人と話してたよな。」
寝言だと思ったが、友人は首を振る。
「寝言じゃない。返事してた。」
その日から、コップを置くのをやめた。
それ以降、何もなかった。
半年後に引っ越した。
荷物を運び終え、最後にベッドをどかした。
壁との隙間に古いガラスのコップが落ちていた。
かなり古い。
埃をかぶっているのに、内側だけは濡れていた。
鍵を返すとき、大家にその話をした。
コップを見せると、一瞬だけ黙った。
「捨てとくよ。」
それだけだった。
少し歩いたところで呼び止められた。
「そういえば。」
「寝る時、水は置いてた?」
「……はい。」
「ああ、ならいい。」
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