今まさに、私が会社で体験している話です。
私の勤めるオフィスはビルの九階にあり、エレベーターを降りて、
廊下を通り、ビルの端まで歩いた先に位置しています。
私は内勤なので、退勤するまではお昼の時間でしかオフィスを出ることはありません。
どこのオフィスビルも、清掃業者が働いているのは同じだと思うのですが、
私の勤める所では、清掃員の方がちょうど私の退勤する頃に通路の掃除をしています。
定時で業務を終えて、帰り支度を済ませて足早にオフィスを出る。
少し歩いた先にいる清掃員の、壮年のおじさんと挨拶を交わすのが習慣になっています。
ただ、ひとつだけ気になる点があるのです。
そのおじさん、いつも挨拶がワンテンポ早いのです。
人それぞれだろうと言われてしまうとそれまでですし、
そもそもこんな疑問を抱くこと自体失礼だとは思うのですが、
なんだかそれが少し、気になっていました。
先週のことです。
定時で仕事を終えて、いつものようにおじさんと挨拶を交わして、
エレベーターに乗り込み、一階に到着したところで、
上司から電話がかかってきました。
業務でイレギュラーが発生したので、急遽戻ってきてほしいとのこと。
断ることができなかった私は、九階のボタンを押しました。
エレベーターが到着して、足早に通路を歩くと、
まだ清掃中のおじさんの背中が近づいてきました。
するとおじさんが、
「お疲れ様です。」
と言ったのです。
誰も、何もいない通路に会釈をしながら。
奇妙なものを見たなと思い、そのままおじさんの横を通り過ぎると、
「忘れ物ですか?」と声をかけられましたが、返事もそこそこに私はオフィスへ向かいました。
以来、今日に至るまで、おじさんと目を合わせることができていません。
なんというか、おじさんと目を合わせると、彼の視線の先にいると、
得体の知れない何かと、ぶつかってしまう気がするのです。





















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