【小学校の心霊事件】 -小学生　朽屋 瑠子-

話に出た心霊現象のほとんどは、よくある学校の七不思議と言ったものだったが、
朽屋にはひとつだけ気になる話があった。
それは、旧校舎１階の男子トイレに出る幽霊の話だ。

「ニンニン、その幽霊見たの?」

「いや、実際には見てないよ。あれはまだ僕が3年生の時で、上級生たちの間で広まってた噂だったんだ。それに、すぐ旧校舎は閉鎖されて、立ち入り禁止になっちゃったしね」

「ふ~ん」

忍足少年の話をまとめると、こうだ。
放課後の遅い時間にグラウンドで遊んでいた６年生が、そろそろ帰ろうかと思った時にトイレに行きたくなり、旧校舎1階のトイレを借りることにした。無事に用を済ませると、誰もいないと思っていた後ろの個室から人の声が聞こえる。ふと覗いてみると、そこには首吊りをしている少年がいたのだ。

驚いていると、今度は誰かがトイレに入ってきた。それは大きな枝切ばさみを持った用務員さんで、彼はその持っていた枝切りばさみで首吊りをしている少年のロープを切り、救い出していた。助け出された少年は、その瞬間、霧のように消えてしまったと言う。実はその子供は幽霊だったのだ。用務員さん曰く、毎日この時間になると子供の幽霊が首吊りをするのだと。最後に用務員さんは、この話は誰にも言うなと言い残して去っていく・・・というものだった。

「ふ~ん、口止めされたのに上級生たちに噂は広まってたんだね」

「まぁ、秘密ってのはそんなものでござるよ」

「ところで、その子供の幽霊、毎日同じ時間になると首吊りしてるんでしょ?
今もそうなのかなぁ・・・」

「今?・・・う～ん、今も首を吊ってる・・・かもしれないねぇ?」

「もしかして、もう誰も助けに行ってないの?」

「う~ん・・・なんせ、そのすぐあとに旧校舎自体が立ち入り禁止になったからね。用務員さんももういないし・・・」

「助けに行こう!!」

「えっ?」

「助けに行こうよ、ニンニン!」

「えっ!?　つまり、その子供の幽霊を助けに??」

「助けられるかどうかわかんないけど、まずは下調べとして見に行こう」

「マジですか、クッチャさん~・・・でも、鍵かかってるでござるよ」

「鍵なんてホラ、これで」
そう言って朽屋は髪を留めていたヘアピンを一本はずした。

「前にテレビで見た。これで鍵を開けるの」

「さすがにそれはどうかと思うでござる」

「じゃあ・・・」
朽屋は石を拾って忍足に手渡した。

「これでガラス窓を壊して・・・」

「はっ!! 目的のためなら手段を選ばない人だ、この人っ!!」