うちには飼い始めて20年になる老猫がいる。
10年生きれば猫又になるなんて話もある。
うちの猫は、今日もたっぷり寝て、大あくびをして、のんびりと歩き回って――自由気ままに暮らしている。
ほんと、気楽なもんだよ。
そんな猫を俺は抱き上げ、目を見つめて言ってやった。
「10年生きれば猫又になれるとは言うけど、猫又になれるのは外の世界で厳しい生活を乗り越えた猫だけだぞ。
お前みたいに安穏と20年生きてたって、猫又にはなれないからな」
猫は数回瞬きしたあと「話があるならその場でしろ。持ち上げるな」と面倒くさそうに声を出した。
「お……お前、喋れるのか?!」
でも、猫は俺の言葉を無視した。
「下ろせ。あと、このことは忘れろ」
せっかく抱き上げて話しかけてやったのに、猫は迷惑そうな顔しかしない。
仕方なく猫を下ろしてやると、のそのそと歩いて、少し離れたところでゴロリと寝転んで毛づくろいを始めた。
ほんと、気楽なもんだよ。
記憶を消されたフリをしてあげてるだけなのに。
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