【小学校の心霊事件】 -小学生　朽屋 瑠子-

「ニンニン、かわいい」

「でしょ?自分でも気に入ってるっす」

「アタシは朽屋 瑠子。実は今日転校してきたばかりなの」

「クッチャルコ・・・いや、朽屋 瑠子さんね。なかなかすごいチカラを持ってるね」

「オシダリ先輩こそすごいチカラ。・・・助けてくれてありがと」

「なぁに、パワーこそ力だよ。なんつって」

「あれはなんていう技なの?」と朽屋が聞く。
強い霊能力を持ったもの同士、興味が尽きず、しばし話し込んでしまった。

彼、忍足少年は母方の先祖が台湾の出身で道教に通じていたため、その素質を受け継いでおり、呪法、気功術、浄霊、除霊に占いまでできるという霊能力体質であった。

「僕、実はこの能力を買われて某組織からスカウトされてるんだ。中学に入ったら本格的に訓練に入るつもり。今度紹介するよ、如月(きさらぎ)さんって言うんだ」

「ふ～ん・・・・・・」

「背が高くて、ロン毛で、けっこうイケメンのお兄さんだよ」

「紹介してっ!!」

現金な朽屋に思わず吹き出してしまう忍足少年であった。

・・・・・・・・・・・・

翌日、二人は情報交換のために再び放課後に顔を合わせた。
グラウンドの片隅で話し合う二人。

忍足少年は朽屋の能力についていろいろ聞きたがったが、

朽屋自身がその能力の事をあまり理解しておらず、霊力は生まれつきのもので、武道は幼少期から祖父によって鍛えられ、今は毎週日曜日に教会に通って、霊力と剣術の指導をルーカ神父から学んでいるとのことだった。

ここで語られることはなかったが、朽屋にはまだ大きな秘密があった。

朽屋家は代々、隔世遺伝のようにして時々特殊な強い霊力を持った者がこの世に生まれ、古くは平安時代から当時の陰陽師らと共に活動し、帝をこの世ならざる者から守る警護の任に就いていたと言う。その組織を創設したのが朽屋家であり、先ほど忍足少年が加入すると言っていた組織の源流でもある。朽屋自身はそのことをまだほとんど知らずにいた。

戦国時代になると、鉄砲使いの最強傭兵集団として名高い紀伊の雑賀衆らと共にあり、朝廷からの密命で本願寺顕如や、将軍足利義昭を助け、信長とも敵対したと伝わる。
紀州には熊野信仰があり、雑賀衆の指導者である雑賀孫一の家紋にはその象徴でもある八咫烏(ヤタガラス)が描かれているが、これは朽屋家の守護神でもあった。

一説によると、朝廷の密命を受けて信長排除を命じられた明智光秀の軍に朽屋家も遣わされ、信長暗殺に手を貸した・・・とも言われている。
果たして魔王と自ら名乗った信長を、朽屋家の霊力が込められた弾丸が射貫いたのか・・・証拠となる確たる資料は残っていない。もし本当なら、信長の遺体が本能寺から発見されなかった理由も納得だろう。信長は本物の魔物だったことになる。

・・・話を元の世界に戻そう・・・

昨日のこっくりさんの事や、学校内で噂される心霊事件に関して、忍足少年が朽屋に説明している。彼の話では以前からこの地域では心霊事件が比較的多く発生するようで、中でも今は使われていないK小学校の旧校舎には心霊現象の噂が絶えないという。