主人公の大学生、健太は、深夜のアルバイトを終え、終電を逃してしまい、仕方なく最寄りの駅から自宅まで、人気のない夜道をトボトボと歩いていました。
その途中、健太は、普段は通らない、少し遠回りになる道を通ることにしました。
その道には、深夜になると開かずの踏切があるという噂があり、健太は少しだけ興味本位で、その踏切を通ってみたくなったのです。
深夜の踏切は、シーンと静まり返り、街灯の光だけが、線路をぼんやりと照らしていました。
健太は、少しだけドキドキしながら、踏切を渡り始めました。
すると、踏切の中央付近に差し掛かった時、健太の耳に、かすかな音が入ってきたのです。
それは、まるで誰かが泣いているような、すすり泣くような音でした。
健太は、恐怖で全身が凍りつき、その場に立ち止まってしまいました。
そして、ゆっくりと周囲を見回しましたが、そこには誰もいません。
「…気のせいか…」
そう思い、再び歩き始めた時、今度は、さっきよりもはっきりと、すすり泣く声が聞こえたのです。
健太は、恐怖で心臓がドキドキしながらも、必死で冷静さを保とうとしました。
そして、意を決して周囲を見回した時、健太は、信じられないものを目にしたのです。
それは、線路の上に、うずくまって泣いている、黒い人影でした。
その人影は、まるで子供のように小さく、すすり泣きながら、線路を見つめていました。
健太は、恐怖で悲鳴を上げそうになるのを必死で堪え、その場から逃げ出そうとしました。
しかし、その時、踏切の遮断機が、ゆっくりと下がり始めたのです。
健太は、恐怖で全身の血の気が引き、その場に立ち尽くしてしまいました。
そして、踏切の遮断機が完全に下りた時、健太の目の前に、信じられないものが現れたのです。
それは、線路の上に立っている、黒い人影でした。
その人影は、ゆっくりと健太に近づき、そして…
…
その後のことは、誰も知りません。
しかし、その日以降、その踏切は、深夜になると必ず遮断機が下り、電車が通らないにも関わらず、開かなくなったと言われています。
そして、その踏切を通る人は、決して線路を見てはいけない、という噂が広まったのです。
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