奇々怪々 お知らせ

ヒトコワ

鬼笑いの語り部さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

一緒にいたのに
短編 2025/03/24 10:35 933view

その日、私は親友のユイと近くの公園で待ち合わせをしていた。少し遅れて公園に着くと、ユイはもうベンチに座ってスマホを見ていた。

「ごめん、ユイ!遅くなっちゃって」

私が声をかけると、ユイは顔を上げてにっこり笑った。

「ううん、私もさっき来たところだよ」

私たちはいつものように他愛もないおしゃべりをしながら、公園の遊歩道をゆっくりと歩いていた。夕暮れ時で、公園には私たち以外誰もいなかった。

ふと、ユイが何かを見つけたように立ち止まった。

「ねえ、あれ見て」

ユイが指差す方を見ると、遊歩道の脇にある茂みの奥に、古い小さな祠があった。

「あんなところに祠、あったっけ?」

私もユイも、この公園には何度も来ているけれど、あんな祠があったなんて知らなかった。

「ちょっと行ってみようよ」

ユイは好奇心旺盛で、怖いもの見たさもあった。私たちは少しドキドキしながら、茂みの奥へと進んでいった。

祠は古くて、扉は閉ざされていた。周りには誰もいないはずなのに、ひんやりとした空気が漂っていて、何だかゾクゾクした。

「なんか怖いね、早く帰ろうよ」

私がそう言うと、ユイは祠の扉に手を伸ばした。

「ちょっとだけ、中を見てみようよ」

ユイが扉を開けようとしたその時、背後から声をかけられた。

「こんなところで何してるんだい?」

振り返ると、そこには見慣れないおじいさんが立っていた。

「この祠は、昔からここにあるんだよ。でも、決して開けてはいけない。開けたら、恐ろしいことが起きるからね」

おじいさんはそう言い残して、どこかへ行ってしまった。

私たちは怖くなって、急いで公園を後にした。

その夜、私はユイと別れて家に帰った。でも、何だか胸騒ぎがして、なかなか寝付けなかった。

ふと、スマホを見ると、ユイからメッセージが届いていた。

「ねえ、大変!さっきの祠のことなんだけど…」

私は急いでメッセージを開いた。そこに書かれていたのは、信じられないことだった。

「私、さっきからずっと家にいるんだけど…もしかして、公園にいたのは私じゃなかったのかも…」

私は背筋が凍り付くのを感じた。だって、あんなに長い時間、一緒にいたのに…。

翌日、私たちはもう一度あの公園へ行ってみた。でも、祠は跡形もなく消えていて、まるで最初からなかったかのようだった。

そして、ユイの家の近くを通った時、ふとユイの家の窓を見ると、昨日公園にいたユイが部屋の中からこちらを見ていた。

1/2
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。