その日、私は親友のユイと近くの公園で待ち合わせをしていた。少し遅れて公園に着くと、ユイはもうベンチに座ってスマホを見ていた。
「ごめん、ユイ!遅くなっちゃって」
私が声をかけると、ユイは顔を上げてにっこり笑った。
「ううん、私もさっき来たところだよ」
私たちはいつものように他愛もないおしゃべりをしながら、公園の遊歩道をゆっくりと歩いていた。夕暮れ時で、公園には私たち以外誰もいなかった。
ふと、ユイが何かを見つけたように立ち止まった。
「ねえ、あれ見て」
ユイが指差す方を見ると、遊歩道の脇にある茂みの奥に、古い小さな祠があった。
「あんなところに祠、あったっけ?」
私もユイも、この公園には何度も来ているけれど、あんな祠があったなんて知らなかった。
「ちょっと行ってみようよ」
ユイは好奇心旺盛で、怖いもの見たさもあった。私たちは少しドキドキしながら、茂みの奥へと進んでいった。
祠は古くて、扉は閉ざされていた。周りには誰もいないはずなのに、ひんやりとした空気が漂っていて、何だかゾクゾクした。
「なんか怖いね、早く帰ろうよ」
私がそう言うと、ユイは祠の扉に手を伸ばした。
「ちょっとだけ、中を見てみようよ」
ユイが扉を開けようとしたその時、背後から声をかけられた。
「こんなところで何してるんだい?」
振り返ると、そこには見慣れないおじいさんが立っていた。
「この祠は、昔からここにあるんだよ。でも、決して開けてはいけない。開けたら、恐ろしいことが起きるからね」
おじいさんはそう言い残して、どこかへ行ってしまった。
私たちは怖くなって、急いで公園を後にした。
その夜、私はユイと別れて家に帰った。でも、何だか胸騒ぎがして、なかなか寝付けなかった。
ふと、スマホを見ると、ユイからメッセージが届いていた。
「ねえ、大変!さっきの祠のことなんだけど…」
私は急いでメッセージを開いた。そこに書かれていたのは、信じられないことだった。
「私、さっきからずっと家にいるんだけど…もしかして、公園にいたのは私じゃなかったのかも…」
私は背筋が凍り付くのを感じた。だって、あんなに長い時間、一緒にいたのに…。
翌日、私たちはもう一度あの公園へ行ってみた。でも、祠は跡形もなく消えていて、まるで最初からなかったかのようだった。
そして、ユイの家の近くを通った時、ふとユイの家の窓を見ると、昨日公園にいたユイが部屋の中からこちらを見ていた。
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