その絵は、古い洋館の地下室にひっそりと飾られていた。少女が描いたとは思えないほど、禍々しく、おどろおどろしい風景画。しかし、どこか見る者の心をざわつかせる、そんな不気味な魅力を放っていた。
絵の中央には、赤黒く染まった空が描かれている。稲妻が幾重にも走り、今にも何か恐ろしいことが起こりそうだった。その下には、ひび割れた大地が広がっている。そこには、無数の手形が残されており、まるで何かを必死に求めているようだった。
そして、絵の隅には、やはり少女が描かれている。少女は、こちらに背を向け、何かを見つめているようだ。しかし、その体は、異様に歪んでおり、まるで人形のように不自然だった。
絵を見ていると、底なしの闇に引き込まれるような、そんな恐怖に襲われる。まるで、絵の中に閉じ込められてしまいそうな、そんな錯覚に陥る。
ある夜、その洋館に忍び込んだ若者がいた。若者は、好奇心に駆られ、地下室へと足を踏み入れた。そして、その絵を目にした。
若者は、絵の異様な雰囲気に魅了され、時間を忘れて見入っていた。すると、突然、絵の中の少女がゆっくりとこちらを振り返った。
少女の顔は、能面のように無表情で、ただ黒い瞳だけが、若者をじっと見つめていた。そして、その口元が、ゆっくりと歪み始めた。
それは、笑みではなかった。ただ、顔の筋肉が痙攣(けいれん)しているだけだった。しかし、その光景は、何よりも恐ろしかった。
若者は、恐怖のあまり、その場に崩れ落ちてしまった。次の瞬間、少女は絵の中から抜け出し、ゆっくりと若者に近づいてきた。
少女は、若者の目の前まで来ると、その歪んだ口元で何かを呟いた。
「あなたは、私たちの仲間になる」
その瞬間、若者の体は、人形のように硬直し、意識は闇に包まれた。
次の日、若者は地下室から姿を消した。そして、絵の中には、新しい少女の姿が描かれていた。その顔は、やはり能面のように無表情だったが、その口元は、わずかに歪んでいた。
ホントに取り込まれたんか