東京の郊外、ある小さな駅前のバス停で、深夜にだけ現れる「消えた深夜バス」の話を知っているだろうか?
それは、終電が過ぎた後の午前1時45分、決まって1台の古びたバスがやってくるというものだ。行き先の表示は「終点」。ただそれだけ。運転手は無言で、顔はぼんやりと影に隠れて見えない。しかし、乗客が乗ると、静かに扉が閉まり、バスは動き出す。
バスに乗った者は、二度と戻らない──そんな噂がある。
ある夜、大学生の田中翔太は、酔い潰れた友人を送り届けた帰りに、最終電車を逃してしまった。タクシーを呼ぶのも面倒に感じた彼は、偶然見つけたバス停に足を向けた。
「…終点?」
不思議に思いながらも、歩いて帰るのが嫌だった翔太は、そのバスに乗り込んだ。車内は妙に静かで、他の乗客はうつむいたまま、誰一人として話さない。妙な寒気を覚えながらも、翔太は窓の外を眺めた。
しかし、見慣れた街並みはすぐに霧に包まれ、次第に風景が変わっていった。高層ビルもコンビニも、すべてが消え、代わりに現れたのは、古びた木造の家々が並ぶ見知らぬ町。
「こんな場所、東京にあったか…?」
翔太が不安に駆られたそのとき、突然、車内アナウンスが流れた。
「次は、終点です。お降りの方は、お忘れ物のないように」
すると、乗客が一斉に立ち上がり、無言のままバスを降り始める。彼らの顔はどこかぼんやりと滲み、まるで存在そのものが薄れているようだった。
恐怖を感じた翔太は、急いで運転手に声をかけた。
「すみません、このバス、どこに行くんですか?」
運転手はゆっくりと彼を振り返った。
──そこに、顔はなかった。
次の瞬間、翔太の意識は真っ暗になった。
……
翌朝、翔太の友人が彼の家を訪れたが、翔太の姿はどこにもなかった。スマホも財布も、すべて部屋に残されたまま。まるで最初から存在しなかったかのように──。
そしてその夜も、バス停には「終点」と書かれた深夜バスが、静かに現れたという。
あなたは決して、そのバスに乗ってはいけない──。






















すごいですね!
めっちゃ面白くて、程よく怖い怪談…最高です!