それから、2週間ほど経ちました。
相変わらず、ドアノブは湿っていて、拭いても拭いても、また次の日には湿っていました。
そのうち、赤茶色の錆びみたいなのがこびり付くようになりました。
私が何度、管理会社に連絡しても「雨風の影響かも」という適当な返事だけ。
雨風にしては、粘り気があると言っても、対応は変わらずでした。
また日付が変わって、突然シフトが休みになった日のことです。
その日は一日中寝ていようと思っていたのに、結局いつも仕事に行く3時間後ぐらいに目が覚めてしまったんです。
眠気眼を拭っていると、玄関の方から変な音が聞こえることに気づきました。
ガチャ・・・ガチャチャ・・・ガコン
ガ・・・チャガチャ・・・ガコン
「うぅぅ~~、あっ、うぁ、ぁぁ~~あ」
その音に混じり、何か呻き声のような、意味の分からない声が漏れ聞こえていました。
全身に鳥肌が立ち、呼吸が乱れました。
『すいません、昨日あんた何やってたの? うるさくて、眠れなかったんだけど。』
以前の男の言葉が、頭の中で何度も反響しました。
ガチャガッ・・・チャ・・・ガッ・・・コン
「ああぁ・・・あ~・・・」
ガチャ・・・ガチャ・・・ガッコン
「ぅおおおぉ~~ぁ、ああぉ・・・んおおぉ」
スマホを握りしめましたが、警察になんと説明すればいいか分からず・・・
ただ「誰かがドアを開けようとしている」だけで伝わるのか、いたずら電話だと思われないか、
結局、その時は電話できずじまいで、
恐怖で足がすくみ、数分間はベッドから動けませんでした。
しかし、このまま何もしなければ、いずれあの何かが部屋に入ってくるかもしれない。
私はそう思ったので、意を決して、様子を見に行くことにしました。
穴二