奇々怪々 お知らせ

ヒトコワ

はどはどさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

ドアノブの錆
短編 2025/03/14 20:55 1,370view

私は、夜勤で昼夜が逆転していました。

このマンションを選んだ理由に特別なものはなくって、駅から近く、家賃が安かった。ただそれだけだったんです。
引っ越して3週間ほど経つが、不思議と隣人とは一度も顔を合わせていない。

近くには24時間営業のスーパーもあり、駅まで徒歩5分ほど。不便はこれといってありませんでした。
だが一つだけ気になることがあって・・・
夜勤明けで帰るたびに、玄関のドアノブが湿っていたんです。

その湿り気は、拭っても拭っても翌日には再び現れ、
雨や朝露とは明らかに違う、どこか粘り気を帯びている気がしました。

ある日、夜勤がいつもより早く終わり、珍しく朝早くマンションの階段を上っていると、途中ですれ違った男がいました。

その男は妙に鼻を突く異臭をまとっていて、早く帰れた爽快感を、一瞬にして消し去るような、不快な臭いでした。

部屋に入り、シャワーを浴びようと荷物を置いたその時、

ドン、ドン、ドン

と、激しく玄関を叩かれました。

恐る恐る覗き穴を覗くと、さっき階段ですれ違ったあの男が立っていました。

「すいません、昨日あんた何やってたの? うるさくて、眠れなかったんだけど。」
男の声は低く、微かに震えていました。

その日は確かに夜勤で、部屋にいるはずがないんです。
私はドアチェーンをかけ、小さくドアを開けてそれを告げようとしましたが、男は私の言葉を遮って、

「昨日仕事ぉ? あぁ、そうか・・・」
と言ったんです。

納得したように見えましたが、次の瞬間、チェーンの隙間に強引に手を突っ込み、限界までドアを開けると、黙ったまま私を睨んできました。
その目は異様な光を放っていて、言葉が喉に詰まって・・・

その後、男は鼻を鳴らすと、
「とにかく、静かにしてくれよ」
とつぶやいて、帰って行きました。

ドアを閉め、二重の鍵を掛けると、いつの間にか汗まみれの手のひらを見つめていたのを覚えています。

1/3
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。