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ヒトコワ

どこかで見た話さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

窓の外のひとたち
短編 2025/04/16 21:56 1,737view
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この街の人たちは、みんな笑ってる。
朝、通勤途中の駅。電車の中。コンビニのレジ。郵便配達員。
誰もかれも、ずっと笑顔。にこにこしてる。あいさつも明るい。

だけど、笑い方がおかしい。
口だけが動いてて、目は笑ってない。
というか、目を開いてない人すらいる。
それに、笑ってる時間が長すぎる。

会社でもそうだ。
課長は書類を読みながら笑ってる。
隣の席の人は、トイレから戻るたびに笑ってる。

雑談の内容も妙だ。「昨日、夢にすごくきれいな顔が来たんだよ」とか「声が壁から出てきてさ」とか、みんなが当然のように不気味なことを言う。

最初は冗談かと思った。でも違う。
みんな、本気で言ってる。
俺が「それ、変じゃないですか?」と聞いた瞬間、全員の笑顔がぴたりと止まった。

誰も何も言わないまま、にゅ、と口角だけがまた引きつるように持ち上がった。

あの時、心から寒気がした。

家に帰って、玄関を閉めた瞬間、安心した。

けど――ふとカーテンを閉める前に外を見ると、道路の向こうに、5~6人が立っていた。
みんな、こっちを向いてる。

それぞれが、同じ顔で、同じ笑顔で、同じタイミングで頭をかしげてきた。

まるで、外の“世界”そのものが、こっちを見てるみたいだった。

次の日から、出社しても誰もいなかった。
オフィスの机だけが整然と並んでいて、電話も鳴らない。

スマホを見ても、SNSのタイムラインには誰の投稿もない。
ニュースも、天気も、全部「快晴です!にっこり♪」という謎の一言だけ。

郵便受けに入っていたチラシには、こう書いてあった。

「あなたも、もうすぐ。
 窓を開ければ、ほら、外はずっと笑っている。」

夜、何かの音で目が覚めた。

カーテンの向こうから、誰かが爪で窓を叩いていた。
ひっかく音じゃない。リズムを刻んでる。笑ってるような音。

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