トイレはもちろん店内廊下・レジ周りすべてを「非びしょびしょ」にしなければならない。
とはいえ、これくらいは「怖い」には ならない。
そもそも挨拶してくれるしポイントカードも使っている。
何も言わずに商品を投げてくるようなチンピラよりずっとマシだ。
理性のある人である。
びしょびしょだけど。
#3『はだしおじさん』
帰り道、深夜帯になってしまうことがある。
徒歩でひとけの無い住宅街を歩いていると、決まった場所でいつも行く先に後ろ姿の人物が立っている。
あの道を使い始めてから1年ほどにもなるけれど、目的はなんとなくわかっていた。
というのも、ジャージ姿で、どうやら頭髪が薄い感じの(たぶん)おじさんが、
ただマンションの近くで煙草を吸っているだけだったから。
たぶんそこのマンションは喫煙が禁止で、わざわざ屋外に出て吸っているんだろう。
あえて振り向いて顔を確認するなんて、
そんな必要も無いし、失礼にもあたるので、べつに注視することもなくずぅっとただ通り過ぎていた。
ある夜、いつもの帰り道、いつものマンション前に差し掛かって、ふと気づいた。
「このおじさん、裸足だ」
どうしてだろう。
なんだかわからないけれど、それから数日はそのマンションを避けて、遠回りをしていた。
4日後、地域のニュースで、そのマンションでの心中自殺のニュースが流れた。
顔も知らないので、そのおじさんが関係しているかどうかはわからない。
けれどなんとなく
「あの夜、振り向かなくてよかった」
という気がしている。
#4『知らない子』
「知らない人は夢に出ない」らしい。
例えば昔の同級生とか今の同僚とか、かつて観てきたドラマの俳優とか、
その人そのものではなくても、合成され編集され、もし知らない誰かが出てきたとしても、
これまでの記憶を寄せ集めたキャラクター以外では産まれ得ない。






















この勢いでもっといろんな夜を見たいです