短編
2024/12/18
15:47
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3日前。
ごく当たり前に道を歩いていて、歩道橋を上がって、
ごく当たり前に前を見ていたら、
前から危ないなと思っていた廃ビルに、前から気になっていた同級生の加藤さんが立っていた。
屋上に。
「たぶんそうなんだろうな」と思った数秒後に、
無機質な「ばしゃっ」という音が聞こえた。
不意に手が震えて、
持っていたスマホを歩道橋から落としてしまった。
そしてスマホはトラックに轢かれた。
ちょっと離れた名古屋に住んでいる昔からの友達とは、LINEでしか連絡が取れない。
前田さんだから、あだなで前ちゃん。
前ちゃんとは毎日連絡を取っていたので、心配させちゃうかな。
それが3日前のこと。
翌日、加藤さんのことをよく知りもしない校長が、全校集会で悼みを述べた。
昨日は、ずっと吐き気がしていた。
誰かにずっと肩をつかまれている感じ。
そして今日。
今夜は自分の部屋で、鍋を囲んでいる。
「あゆみってなんでダイオウグソクムシのフィギア持ってるの?」
「いやいや 趣味じゃんかそれはべつに」
「前ちゃんだって変なBL持ちすぎでしょ」
「あれは芸術だから フェルメールと同じ」
「知らねえよ!」
ただひとつ問題なのは、
私のスマホは壊れたままで、
今夜ここで話しているのが、
加藤さんと前ちゃん。
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