埋まっていたおじさん
投稿者:ねこじろう (154)
そんなに悪そうな人ではなさそうだったので、僕は地面に四つん這いになっておじさんの顔を見る。
お父さんくらいの年齢だろうか。
額に何本かの皺があり、かなり顔は汚れている。
「ねえ、おじさん。
おじさんは何でこんなところにいるの?」
おじさんはしばらく少し考えるような顔をしてから、言った。
「それがな、わし大阪の○○組で会計係やっとたんやけどな。
パチンコにドはまりしてからようさん借金作ってもうてな。
そんで思わず組の金に手出してもうて、、、
それがとうとうばれてもうてな、こりゃあヤバい殺されるってとんずらこいたんや。
それからは半年くらい何人かの女のアパートを転々としとったんやけど、もう生きた心地せんような生活やったわ。
そんである日とうとう組の連中が女のアパートにまで乗り込んきおって、わしパジャマのまま窓から飛び降りてな、そりゃあもう必死に逃げたわ。
そんでようやく追っ手から逃れてから地下鉄に乗っとる時のことなんやけどな、前の長椅子に鉢植えの花を大事そうに膝に乗せた女の子を見掛けてな、、、
わし、それ見た時何故か
『あ~わし、次生まれた時は木とか花になれたら、どんなにか幸せか』としみじみ思った。
そしたらや、いきなり電車の窓という窓からパアッと白い光が差し込んできてな、わし頭くらくらってなってもうて、そのまま目の前が真っ暗になってもうて目覚ましたら、ここに埋まっとったんや」
「それっていつのことなの?」
「そうやなあ……いつやろ。
あれは確か二千円札が発行されたり、イチローが大リーグに行ったころやから……まあ、だいぶ昔やな」
「ご飯とかはどうしてるの?」
「いや、それがな、食わんでも何ともないんや」
面白かったです!
早速のコメントありがとうございます。
━ねこじろう
組の人に見つかって埋められちゃったのかと思いきやまさかの人面植物への転生、ぜひもう一度埋め直して養生してあげて欲しい。
なるほど、それも面白いですね
━ねこじろう
さい後におじさんの首から下は根っこだと言うことが、とても怖くてトラウマになりました。
主人公の無垢な少年が、このおじさんにとんでもない約束をした場面でヒヤリとしました。また、この植物になりかけていたおじさん(パンを食べるから、まだ人間の部分が残っているのかな?)を見ちゃった少年のおじいちゃんのことも、心配になりました。(お年を召しているという意味で)