ごめんで済むなら呪いはいらない
投稿者:Mine (24)
深夜1時から3時の間に暗い場所でお皿の上に巾着袋を置き、周りを3本の蝋燭で囲む。
それから巾着袋に火をつけ、燃えている間は祝詞を唱え続ける。
そして燃え尽きたら灰に清酒をかけて最後に蝋燭の火を消す。 ……以上で終了。
ちなみにこの呪術は図書館にあった民俗学の本から参照しているそうです。
ちょうど説明が終わったタイミングで目覚ましのベルが鳴り響きます。
「ナツミ……本当に……」
カオルは申し訳なさそうな憂いを帯びた声で何かを言いかけました。
「心配しないで。私絶対やり遂げるから!」
そう誓ったところで目が覚めました。
説明の中にあった祝詞は忘れない内にすぐにノートに書き写します。オカルトには疎いけど、説明通りやるだけなら大丈夫。
その日は学校の授業の内容が全く頭に入らず、ひたすらあの呪術のことばかりを考えていました。
タチバナはカオルを死に追いやった事に後ろめたさや後悔は感じていないのかな。
良心の呵責に苦しむ事なく、高校生活を満喫しているんだろうか。
カオルは高校生になれなかったのに……。
そこでふと、重要な事に思い当たります。
この呪いが成就したらタチバナはどうなるんだろう。
生涯不幸になるのか、それともやはり死んでしまうんだろうか。あるいは……。
不安が鎌首をもたげ、やっぱりやめた方がいいのではと臆病風に吹かれましたが、カオルの涙を思い浮かべると頭を振り、恐れを打ち消しました。やっぱり彼女には笑顔でいて欲しい。
今度こそ、カオルを救うんだ。
放課後、帰りにホームセンターに寄り蝋燭を購入しました。お酒はどうしようと悩みましたが家にお父さんが飲んでる日本酒があったのを思い出し、それを拝借する事にしました。
そして家族が寝静まった深夜1時半。
幸い、うちの家族は眠りに着くと余程大きな物音を立てない限りは起きません。火を使うので儀式は浴室で行うことにしました。
窓を開け放した後、お皿に巾着袋を置き、周りに蝋燭を立てていきます。お酒を入れたコップも忘れていません。
浴室の電気を消すと壁に蝋燭の灯りに浮き出た私の影が踊る、呪術を行うに相応しい妖しく幻想的な空間に変貌しました。
準備は万全です。
大きく深呼吸し、いよいよ巾着袋に火を付けようとライターを手にした時です。
ずっと気になってる事を思い出しました。
この巾着袋には何が入っているんだろう。
魔が差したというか、呪いを執り行う私には中を見る資格があるように思い、巾着袋を手にして口を開けました。
中には折り畳まれた紙片が入っています。
主犯格は許せないが、見て見ぬふりされ助けてくれ無かった事の方残酷な事なのですね。
いじめた生徒は、自殺に追い込んでしまったと自覚すら持たず、のうのうと生きている人達がいるのも現実です。
いじめの無い世の中になればと考えさせられる内容でした。
怖かったです。
人間が一番怖いです
いじめをする人間は悪いけどいじめられる人間も悪いみたいな事をいう風潮があるかぎり、いじめはなくならない。
巾着袋が出てきた時点で、何となくオチが見えましたが、この手の話、好きです。
いや、これ、やはりカオルさん、呪う相手の順位、間違っています。
親友のナツミさんだって、自分を助ける手段を模索し、悩み抜いたんだし。
下手に間に入ったら、自分が標的になる危険があるから、傍観せざるを得なかったのは、ギリギリの決断だったわけです。
そのことは、ナツミさんだって、わかっていたでしょ?
カオルさんが、ナツミさんの立場だったら、やはり、同じ行動を取ったのではないでしょうか?
むしろ、カオルさん、「ナツミさんが、悩んでいたの知っていた。私のために、悩ませてしまって、ごめんなさい。それが言いたくて、夢に出て来た。」
そんなストーリーだったら良かったのにと、思いました。
再度、強調します。
真に憎むべきは、タチバナさんをトップとするイジメの実行グループのメンバーたち。
カオルさん、そこは、しっかり、認識してほしかったです。
蛇足ですが。
今、ほとんどの市町村には、いじめの被害を受けている生徒のための、駆け込み寺のような公機関が設置されています。
朝、登校するフリして家を出て、そこに行けば、保護してもらえます。
さらに、極端なこと言えば。
市町村により、その機関の権限には差がありますが。
例えば、カオルさんの場合、その公機関で、以降、授業を受け、そこから高校も受験でき、義務教育を卒業したことにもしてもらえるなんて可能性もありました。
そういうことを、知っておくことが、大切だと思いました。
これ、真の敵が誰か?、復讐するならするで、その復讐相手はまず誰なのか?の正しい判断がつかない、ある意味愚かな話なのでは?
カオルだって、ナツミの立場になれば、果たして、「自分がターゲットにされてもいいから、親友を助ける」という行動をとれたかどうか?
悩み抜いた結果、ギリギリの判断で、傍観を決め込んだ可能性も高かったのでは?
カオリは確かにいじめの被害者ですが、ナツミにとっては・・・
「ナツミが悩んでいたの、そして私を助けられなくて後悔しているの知ってるよ。私のことで苦しませて、ごめんね」というスタンスで、夢の中に表れてくれるくらいの親友ではなかったのですね・・