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prudence1968さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

蟲毒?
短編 2023/03/26 23:06 1,933view
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蠱毒(こどく)というのをご存知だろうか。
中国の呪術で、壺などにいろんな蟲を詰め込んで共喰いさせ、最後に残った一匹を一番の強者とし、呪いに使うらしい。
人間界で例えれば、さながら古代ローマのコロッセオといったところか。
蟲は昆虫ではなく、ヘビ、トカゲ、カエル、クモ、ムカデ、ゲジゲジ、カイコ、シラミ…など。
想像しただけで気色悪い。

さて、これは知人のAさんから聞いた話。
Aさんは、子どもの頃、親に連れられてよく釣に行っていた。
生き餌を使うことが多かったそうだが、ある時、釣に行くということで、赤やら黄色やらに着色された何かの幼虫を買ってきたらしい(実際にそういう餌がある)。

ところが、その釣が急遽中止となったため、その幼虫はケースに入れたまま、釣具などを収納している物置に放置していたそうだ。
ケースの中には何百匹だかの幼虫が入れられ、ウネウネしていたという。
そのケースのことはすっかり忘れてしまっていたのだが、3年位経ったある日、物置でそれに気づいて思い出したらしい。
ケースの中の幼虫は干からびただろうか、溶けてドロドロだろうか、蓋を開けるのをかなりためらったらしい。

意を決して、思い切って蓋を開けたそうだ。
すると、一匹の羽根のある虫が飛び立って出てきて、ギョッとしたという。
コロッセオの勝者がいたのだ。
ただ、ハエなのかハチなのかそれともガなのか、は覚えていないという。

何の虫かは分からなかったが、そもそも幼虫から数えたとして3年も生きていられるのか?
やはりそういう生命力をもった特別な一匹だったのか。ケースには、呼吸用の小さな穴が空けられていて、窒息はしなかったようだが…。
ケースの中はというと、ドロドロにはなっておらず、干からびた幼虫がいくつかとおそらく糞と思われるものあっただけらしい。
勝者の栄養源は、かつての仲間の他の幼虫だったとしか考えられない。
3年間、暗い物置の狭いケースの中で一体を何を考えていたのだろう。
それとも何も考えずただただ仲間をむさぼっていたのだろうか。それはそれでうすら寒い。

これを蟲毒というのはちょっと大げさだが、大なり小なり虫にはこういう社会があるようだ。
コロッセオでなくとも、人間社会にも似たところがあるかも知れない。

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