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ヒトコワ

prudence1968さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

喰われたい
短編 2024/10/10 23:22 585view
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大学時代の後輩Aの話。

Aが「それ」に気づいたのは、学生時代に2週続けて海水浴に行った時だったという。
2週目の時は、前週の海水浴の日焼けで肌が薄くペロペロ剥けてきていたらしいが、泳ぎ疲れて休んでいる時、体が乾いてくると、剥けてきている肌がふと気になり、左手首の辺りをそーっと剥いてみたそうだ。
半径3~4cm位とけっこう大きく剥けたと思ったので、もっと大きくできないか、とアホなことを考え、その剥いた「薄皮」を風で飛ばされないよう小石で抑えておき、また剥いた。肘の辺りを剥いたら、まぁまぁの大きさに剥けたので、比べようとしてさっきの薄皮を見た瞬間、ゾクッとしたという。
ついさっきまで一応自分の皮膚だったその薄皮を、フナムシがムシャムシャ喰っていたからだと。
そうか、クマやワニなんかはもちろん、こんな小さな生物から見ても人間って餌なんだと思った、とA。
ブラジルかどこかの国で、乳児がゴキブリにたかられてかじられ亡くなった事故を思い出したらしい。
しかし、ゾクッとしたのは、他の生物に喰われることが怖かったからじゃなく、マゾ的な得も言われぬ快感を覚えたからだという。
「それ」に気づいたというワケだ。
自分の体が喰われることが快感だなんておかしい、と冷静に思う一方、新しいこの快感を得たことがうれしくてたまらなかったと言っていた。
まぁ、はっきり言って理解できない。

海水浴から帰ってから何日かは、まだまだ剥けてくる薄皮をできるだけ大きく剥き(特に脚)、タッパーにせっせと貯めたという。
抜けた髪や切った爪も貯めておき、他に何かないものか、と手の平を擦ると出てくる「垢のこより」(消しゴムのカスみたいなの)なんかもこさえたらしい(足の裏やかかとでもできたとか)。
自分の元体がそこそこ貯まったところで、「喰ってもらう」ことにした。Aが住んでいた貸家は古い木造住宅で、ゴキブリもだが、ゲジゲジ、ゾウリムシ、カマドウマなんかが出てきてたそうだ。ネズミも出たし、それを狙ってかヘビが出たこともあったという(家賃は格安だったらしいが、よくそんなとこに住んでたものだ)。
きっと、そいつらが自分の元体を喰ってくれるだろうと、台所の床の隅に新聞紙を敷き、薄皮、垢、髪、爪を分けて置いてみたという。
何が喰いに来るのか知るため、友人からナイトショット機能付きの8mmビデオを借りてきて録画したという。

二日目までは、新聞紙の上の自分の元体に変化がなかったので録画は確認しなかったそうだが、三日目の朝、薄皮が2/3位に減っていたという。
その日は大学のサークルも休んでそそくさと帰り、飯も喰わずに録画を確認したらしい。
薄皮を喰っていたのはゲジゲジだったとか。20分位、モシャモシャ食べていたゲジゲジは、ネズミが来て逃げたらしい。
そして何とそのネズミは「垢のこより」を食べ始めたそうだ。朝、現物を見た時は、薄皮に気をとられて気づいていなかったと言っていた。
ネズミは肉も喰うのか?!と思ったAが調べたら、そういうこともあるらしかった。
髪と爪は一向に喰われなかったので、10日位経った時点で捨てた、と。

日焼けの薄皮は尽きていたので、「垢のこより」を作り続け、貯めては喰ってもらったらしい。

そしてそれは次の年の夏に起こった。
Aは山に出かけた時に、マムシに咬まれ右脚の膝下を切断するハメになってしまったのだ。
(その件が落ち着いたので、今回会っていろいろ話をしたわけ。義足は思ったほど不便じゃないと言っていた。)
病院のベッドの上でそれを聞かされた時は、頭真っ白、言葉が出なかった、と言っていた。これは理解できる。
手術が終わり、足よさらば、と落ち込んでいると、病院から足は自分で火葬場へ依頼して火葬するよう言われたそうだ。
病院が切断診断書(証明書だったかも)を発行するので、火葬場へ申請するよう言われたらしい。
「廃棄物」として病院で処理されるのでは?と思うのだが・・・。
失意のAは、ふとあることを思いつき、マムシに感謝したという。
そう、右脚を何かに喰ってもらえばいいんだ、薄皮や垢とはワケが違う、考えただけでゾクゾクする、と。
聞いてるこっちはドン引きどころじゃなかった。

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