落ちていたメモ
投稿者:八尺マン (49)
ピコン
ふいに俺のスマホが鳴った
見てみると、管理人のおじさんからのメッセージだった
「例の紙切れの件、わかりました。それは松永さんが書いたものです。おばあさんなんですが、物忘れがひどくて、よく買ってくるものとか捨てるものとかをメモをしていました。そういうことをするのはその人しか知りません。まず間違いないでしょう。ただ、その松永さんは2年前に亡くなっています。なので、今更、メモが出てくるわけがないのですが・・・。まあ、きっと、どこかに落ちていたメモが風とかに吹かれてきたのでしょう」
読んでいて途中から俺の身体がガクガクと震えてしまっていた
これを書いた人は2年も前に亡くなっている
このメモの通りだ
捨てたもの 自分の身体
自分の身体はもう捨ててしまっている
そして、捨てた後もメモを書き続けているんだ
1回ならあり得るかもしれないが、何度も2年前に死んだ人のメモが風に吹かれてくるなんてあるもんか
そのばあさんは死んだ後もメモを残している・・・
ぎぃいいい・・
ふいに俺が住む部屋の隣部屋の扉が開いた
あのばあさんだった
いつも挨拶しても何の返事もしない人
いや、そもそも、このばあさんが誰かと交流しているところを見たことが一度もない
ばあさんは顔を上げて、じっと俺を見つめていた
その目は真っ赤に充血していて、血の涙を流していた
「捨てたもの。自分の身体。捨てたもの。自分の身体」
ぶつぶつとつぶやきながら、俺の方にゆっくりと近づいてくる
その口からは無数の虫が蠢いていた
「うわあああああああああ!!!」
俺は一目散に逃げた
とにかく走って、走って、息が切れるまで走って、気が付いたら大通りにいた
誰も追ってきている様子はなかった
俺は引っ越すことにした
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