何者かが住んでいる部屋
投稿者:ぴ (414)
私が親友と出会ったのは、中学生の頃。昔からとても明るくて活発で、感情表現豊かな優しい子でした。いつも人に囲まれてワイワイしているようなそんな人で、胸を張って自慢の親友といえると思います。
ただ、そんな親友にも欠点がありました。それが「心霊体験をしたがる」という厄介な趣味なのです。
昔から「オカルト話」が大好きで、そういう話にはものすごく食いつきが良かったです。
噂で聞いた呪いのビデオは、普通なら「こわ~い」とみんなが怖がるところで、「すっごーい」と意味の分からない感想を述べ、ガンガン近づいていって見るツワモノ。
とにかくそういう幽霊だとか超常現象に異常に強い関心を示し、好奇心旺盛なのです。
私はこの親友の趣味のせいで、何度も何度もホラーな場所に連れまわされたことがあります。
けれど、今まで一度もこの親友といて、実際に怖い体験をしたことがなかったです。
だから次第に幽霊なんていないんだなと思うようになり、私はどちらかというと幽霊を信じないタイプになっていました。
そんな私が初めてそのような体験をしたのは、親友の家でした。
私はその日なんとはなしに親友に呼び出されて、転居したばかりの家に遊びに行きました。
いつもの悪い癖で、親友はまた「曰くつき」と言われているアパートを借りたみたいでした。
度々、こういうことがあったので、私はもう慣れっこでした。
だって以前、首つり自殺をした男が住んでいたといわれる部屋を借りたときも、夜な夜な親を探す女の子の霊が出るといわれていた部屋を借りたときも、朝まで何ひとつ不思議なことは起こらなかったからです。
だから今回も同じように、曰くつき物件でもなんの心配もしていませんでした。
だけど、その部屋は違ったのです。
家に入った途端、何か違うと思いました。家がどんより暗くて、入った瞬間から肌が泡立つのを感じました。
玄関を入ってすぐにキッチンがあるのですが、そこはなんだかずっと薄ぼんやりしていました。
なんと表現したらいいのでしょう。もやがかかっているような視覚的に薄くぼんやりして見えるのです。
そしてその奥にドアがあり、親友の寝室があるのですが、荷物を置いて座っても何だか落ち着きません。
私は気が進まないまま、親友に新しく借りたアパートを案内してもらいました。
部屋は全部で二部屋ありました。キッチンからまっすぐ先が寝室でその右隣にリビング。そのときどきで使い分けているらしかったです。
一人暮らしにはとても広々としており、悠々自適な暮らしができそう。それなのに家賃がこんなに安かったと親友は喜んでいて、いい物件を見つけたとばかりに嬉しそうでした。
でも私は親友と違って、広さに喜んでなどいられませんでした。
まず私の目に飛び込んできたのは寝室の襖に貼ってあるお札です。
「これは何?」と聞くと、親友は「絶対に剥がしちゃダメと言われた」とキラキラした目で、お札を指さすのです。
私はもうこのお札から沸々と部屋のヤバさを感じ取れました。
トイレやお風呂も案内されましたが、私はあのお札が気になって仕方なかったです。
しかも友達がしゃべっている間にリビングからごそごそしているような音が確かに聞こえたのです。
だから親友に「なんか人いない?」と恐る恐る声をかけました。すぐに親友が「まさかぁ」とリビングのほうに向かいました。
それに付いていこうとしたら私のすぐ後ろの足元から「ガサガサっ」と突然音がなって、私は「ひゃあ」と飛び上がりました。
親友が風呂から携帯電話で固定電話に電話したんだろね。
おちゃめな友達だね。