廃屋で見つけた「みいちゃんのアルバム」
投稿者:with (43)
俺はスピードを緩めるために踏み込みを浅くしようとしたが、下半身の感覚がないように思えて、思わず足元を見た。
ぼーーーーーーーーーー
そこにいたのは、女の子だった。
「うわああああああっ!?」
写真の女の子が座席の下から顔を覗かせて俺の足に腕を絡めている。
闇のように黒い顔の中で唯一口らしき空洞がアルファベットのOの字のように開いて、ただ「ぼーーーー」と音を鳴らしていた。
幽霊の出現と運転の制御を失った俺は完全にパニックになり、叫びながらガードレールに衝突した。
ただ、俺の必死なハンドル裁きで直接突っ込むことはなく、辛うじてドリフトするように車体を横に滑らせて勢いを殺し、助手席側から衝突したことで運転席の俺は衝撃で軽く頭をぶつけただけで済んだ。
「ハァ…!ハァ…!あ、あれ!?」
俺は事故にあった自分のことよりも、女の子を探して車内を見渡す。
座席の下、フロント、後部座席、最後に助手席の見るが、女の子は何処にもいなかった。
ぼんやりとした意識の中、車外では事故現場に駆けつけてきた野次馬が数人いて、その中の一人が「大丈夫ですか!」と窓を叩いているのを見ていた。
俺は野次馬が呼んでくれた警察に聴取を受けたが正直何が起きたか自分でも説明できなくて、飲酒か薬物を疑われたがどちらも検出されず、結局居眠り運転だろうと結論付けられた。
その後は事後処理もあったが、まずは病院で頭の怪我を見てもらうよう手配され、後日改めて聴取を取られる事になった。
「あ、あの、座席にアルバムがなかったですか?」
俺が一人の警官に訊ねると、
「アルバム?あったかな、ちょっと待ってね」
と警官は走り出し、半分潰れた車内の中を探してくれ、助手席のシートの下に落ちていたのを拾って渡してくれた。
「ありがとうございます」
俺はアルバムを受け取り救急車に乗ろうとしたがよろけてしまって警官に支えられながら乗車し、病院へと運ばれた。
翌日、病院で治療を受けた後時間も遅かった為検査入院の名目で一晩お世話になった俺は、どこも悪くなく体調も回復したので警察に出頭し、調書やら何やら事故の処理に追われた。
その後、やっとのことで自宅に戻った俺は、ようやくアルバムと向き直る事ができ、ページを開く。
だが意外なことに写真の女の子の顔に汚れはなく、初めて2階で目にした時同様に無表情な写真に戻っていた。
どのページの女の子も顔がハッキリと写っている。
今更ながら、あの廃屋からこのアルバムを持ち出してから怪奇現象が起きている事に俺は気づいてしまった。
だとしたら、汚れていたアルバムの女の子の顔が元に戻ったのは何故だろうか。
俺が事故に遭ったから満足したのか?
何れにせよ、俺はこのアルバムを元の場所に戻しにいくことに決めた。
このアルバムの女の子の顔が再び黒く汚れてしまう前に。
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