廃屋で見つけた「みいちゃんのアルバム」
投稿者:with (43)
俺は自分のテンションの下がり具合と皆の家がここから近いのもあって、解散を提案した。
まあ、すっかり三人の酔いも覚めて日も跨いだことだし、三人も解散に同意してくれた。
一番家が遠いCから送り届け、次にAを降ろし、俺は残ったBを乗せて車を走らせている。
「マジで聞こえたのか?俺聞こえんかったけど」
その時の話題は当然例の声についてだった。
Bも当初はホームレスの仕業だと考えていたらしいが、2階で聞こえた声のこと、車内でアルバムの女の子の写真が変化していたこと、およそ人間の所業で説明つかない現象を体験したことで霊現象なのではないかと薄々思っていたそうだ。
俺自身も幽霊は信じていないが、こうして怪奇現象に遭遇してしまっているのが証拠だ。
「まあ、声も顔も人の手で再現できるよな」
声はCDラジカセか何かで録音して再生し、フロントの顔は車体の下で待機していたのだろうか。
そうなると俺が発進したことで引き殺してそうで、別の地味でゾッとする。
ただ、写真の説明がつかない。
現状整理の為にBと話しているとあっという間にBのアパートに到着し、俺は「また明日」と別れの挨拶を済ませ車を出す。
一人で走行していると賑やかだった友達がいなくなったことに寂しさを感じつつ、何となくBが座っていた助手席に目をやる。
廃屋から持ってきたアルバムが開いた状態で座席に置かれていることに気づく。
「え?」
そこにあるはずのないアルバムに当惑した声をあげ、一瞬ハンドルがずれて車が蛇行したのを正常に戻し、フーッと深呼吸をする。
助手席にはBが乗っていたはずだ。
そのBが降りたあとにアルバムを座席に置いて帰ったというのか?
わざわざ開いて?
車通りの少ない直線でスピードを緩めアルバムを覗くと、よりにもよって例の女の子がアップで写る一枚が暗がりでもよく見える。
ぼーーー…
俺は心臓を掴まれたようにヒュッと口から空気を漏らした。
あの音が聞こえる。
この走行中の車内から、俺の耳にしっかり届いている。
無意識にハンドルを握る力が入り、アクセルを踏み込む。
早く、早く、早く家に帰らねば。
そう考えていた。
ぼーーーー
しかし、俺の心は既に敗北していたのかもしれない。
止まらない動悸と滲む汗。
あの音が脳を揺らしているみたいで、視界がぐわんぐわんと酩酊しているように感じる。
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