リュックに入っていた古いテープレコーダー
投稿者:ねこじろう (147)
皆さんはその昔「カセットテープレコーダー」という録音再生機器があったのはご存じでしょうか?
この話はその「カセットテープレコーダー」にまつわる恐ろしくも悲しい話です。
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三十路で独身のこれといった趣味もないSは、とある8月最後の日曜日に県北部の山に遊びに行った。
この山に行きたいという特に目的があったわけではない。
ただ北部に連なる山々の一つに適当に目星を付けて、愛車で北へと向かっていた。
無数の千切れ雲の漂う青空の下、下したウインドウから吹き抜ける心地よい風を感じながら彼は快適な運転を楽しんでいた。
左手にガードレール右手に山林の広がるなだらかな山道を走り続け、何度目かのカーブを曲がった100メートルほど前方で道は二手に分かれていた。
右手に続く道の手前には看板があった。
スピードを落としながら近づくと「この先1キロ オートキャンプ場」と書かれている。
興味の引かれたSはそちらに進んだ。
両側を山林に挟まれた一車線の山道を走り続けると、やがて前方左手に改めて「オートキャンプ場」という大きな看板が掲げてあった。
彼はその手前でスピードを落とし、看板矢印の示す左の小道に分け入っていく。
鬱蒼とした木々や草に挟まれた小道をしばらく進むと視野が突然開け、あちこち雑草の生えた広大な砂利地が広がっていた。
その向こうには渓流がさわさわと流れているのが見える。
Sは川の側まで車を近づけ停車し、エンジンを止めると降りた。
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随分山奥にまで来ているのか、空気はひんやりとしている。
既にシーズンは終わったのだろう、辺りに人の姿は見受けられず静かだった。
聞こえてくるのは時折聞こえる枝枝の擦れる音とチチチという鳥の声、そして優しい清流の音だけ。
見上げると相変わらず薄曇りの空が広がっている。
日暮れまでにはまだ時間はあるようだ。
Sは少し上流に向かって歩いてみる。
たまに足元の視界に入るビールの缶や花火の燃えカスが、賑やかだったキャンプのシーズンを偲ばせてくれる。
なかなか面白かったです。
こういう作品好きですね
ワクワクするタイトル
怖いというよりも悲しい
皆様、コメントありがとうございます。
とても創作の参考になります。
─ねこじろう